研究課題
染色体端部欠失・逆位重複の発生メカニズムはまだよくわかっていない。頻度の高い8pの端部欠失・逆位重複は相同性の高いinverted repeat配列を介した非アリル間相同組み換え(Non-Allelic Homologous Recombination: NAHR)とされているが、そうでない散発性のものに関しては未解明である。5例の染色体端部欠失・逆位重複の切断点の解析を行った。4p, 8q, 9p, 10q, 11qの染色体端部欠失の症例にマイクロアレイ染色体検査を行うことで端部欠失のすぐ近くに接して重複領域が存在することが同定され、FISH法を用いた向きの解析により逆位重複が確定された。引き続いて、次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンスをメイトペアで行うことにより、端部欠失・逆位重複の切断点及びジャンクションの配列情報を得た。5例のすべての症例において逆位の折り返し点には対称性はなく、長い介在配列が存在した。介在配列のサイズは共通して数kbであった。ジャンクション配列は数塩基のマイクロホモロジーを介して結合しており、なんらかの複製の停止(Fork Stalling and Template Switching: FoSTeS)の関与が推測された。停止後の複製の再開は、DNA端の核内距離が近い同時進行中の近傍の複製フォークへの侵入、鋳型乗り換え(Microhomology-Mediated Break-Induced Replication: MMBIR)による複製の再開が示唆されているが、本研究の結果からは、同一フォーク内のleading鎖からlagging鎖への鋳型乗り換えが生じたときに、逆位重複が生じることが推測された。
2: おおむね順調に進展している
遅れていたサンプルの解析がを行い、染色体端部欠失・逆位重複の切断点の解析が完了し、その発生メカニズムの一端が解明できた。
次の研究対象である複雑構造異常の発生メカニズムの解明に全力を傾ける。方法は、同じく、次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンスをメイトペアで行うことにより、切断点及びジャンクションの配列情報を得ることで、発生メカニズムに迫る。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
J Obstet Gynaecol
巻: 38 ページ: 1-3
10.1111/cga.12278
Hum Genome Var
巻: 4 ページ: 17021
10.1038/hgv.2017.21
J Hum Genet
巻: 62 ページ: 869
10.1038/jhg.2017.59
Mol Cytogenet
巻: 10 ページ: 15
10.1186/s13039-017-0316-6
Neurol Genet
巻: 3 ページ: e152
10.1212/NXG.0000000000000152
J Gen Virol
巻: 98 ページ: 1823-1830
10.1099/jgv.0.000834
Mol Cell
巻: 67 ページ: 1026-1036.e2
10.1016/j.molcel.2017.07.027
Oncotarget
巻: 8 ページ: 84729-84742
10.18632/oncotarget.20951
Cytogenet Genome Res
巻: 153 ページ: 1-9
10.1159/000481586
http://molgen.icms.fujita-hu.ac.jp