研究課題
染色体の複雑構造異常の発生メカニズムはまだよくわかっていない。単純な染色体構造異常は、従来より、DNAの2重鎖切断とその誤った修復によって発生すると考えられてきた。実際に切断点や結合部のゲノム解析により、繰り返して起こる構造異常は、繰り返し配列に起こった切断に対して、染色体上の別の位置の相同配列を介して修復する、修復のエラー、すなわち非アリル間相同組み換え(Non-allelic homologous recombination)の経路によって発生する。繰り返し起こらない構造異常は、ランダムな切断に対して、非相同末端結合(Non-homologous end joining)によって発生する。本研究ではG分染法で三カ所以上の切断点を持つ構造異常の切断点の解析を行った。最初にマイクロアレイ染色体検査を行ったが、切断点近傍のコピー数は複雑で、クロモスリプシスと呼ばれる染色体破砕現象が生じていることが予想された。引き続いて、次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンスをメイトペアで行うことにより、構造異常の切断点及びジャンクションの配列情報を得た。解析したすべての症例において切断点にはG分染法では見つからない複雑な再構成が存在した。ジャンクション配列は数塩基のマイクロホモロジーを介して結合しており、なんらかの複製の停止(Fork Stalling and Template Switching: FoSTeS)の関与が推測された。停止後の複製の再開は、DNA端の核内距離が近い同時進行中の近傍の複製フォークへの侵入、鋳型乗り換え(Microhomology-Mediated Break-Induced Replication: MMBIR)による複製の再開が示唆されているが、それを予想させるデータであった。本研究の結果と近年の知見から、遅滞染色体に起因する微小核の中の染色体が、DNA複製の進行度が核ゲノムとずれが生じることで、DNA鎖の断端が発生し、上記の経路で修復されることにより複雑構造異常が生じることが推測された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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