研究課題/領域番号 |
15H04712
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中山 淳 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10221459)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃粘液 / 硫酸化糖鎖 / 糖転移酵素 / 硫酸転移酵素 / ダブルノックアウトマウス / 粘膜下異所性腺 |
研究実績の概要 |
スルホムチンは硫酸基を有する酸性粘液で、分化型胃癌でその産生が亢進しているが、その病理学的意義は不明な点が多い。一方、胃腺粘液は糖鎖の末端にα1,4結合型N-アセチルグルコサミン残基(αGlcNAc)を含む特徴的な糖蛋白質を含んでおり、これまでに我々はαGlcNAcを欠損したA4gntノックアウト(KO)マウスを作出し、このマウスの胃幽門部粘膜では慢性炎症を基盤に分化型腺癌が自然発症することを報告した。このマウスの幽門部粘膜では胃体部粘膜と比較してスルホムチンが著明に増加していることから、スルホムチンが胃分化型癌の発生を促進している可能性が示された。本研究の目的はこの仮説を検証すべく、胃癌発生におけるスルホムチンの役割を解明し、その成果を胃癌の病理診断に還元することである。平成27年度は胃腺粘液の硫酸化に係わる硫酸転移酵素であるGlcNAc6ST-4を欠損したChst4 KOマウスとA4gnt KOマウスを交配してA4gnt/Chst4 ダブルKO(DKO)マウスを作製し、3-60週齢までの胃粘膜を病理学的に解析した。その結果、A4gnt/Chst4 DKOマウスの胃粘膜ではスルホムチンが完全に消失していることが確認できた。A4gnt/Chst4 DKOマウスの幽門部粘膜でもA4gnt KOマウスと同様に異型腺管が発生したが、興味深いことに3週齢の時点で既に高頻度にびらんが生じ、同部には腺粘液の形質を示した再生上皮が認められた。さらに加齢と共にびらん面に粘膜下異所性腺(gastritis cystica profunda)が出現した。一方、Chst4 KOマウスの胃粘膜には著変がみられないことから、スルホムチンはαGlcNAcと共存することで、びらん→再生→gastritis cystica profundaへの進展を防ぐ役割を有している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A4gnt/Chst4 DKOマウスの胃粘膜では3週齢からびらんが生じ、加齢と共に粘膜下異所性腺が出現するという新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
4gnt/Chst4 DKOマウスの胃粘膜に生じる炎症の特徴について、びらんが出現する3週齢についてはDNAマイクロアレイを用いて網羅的に、過形成から異型腺管が出現する5週齢、10週齢、50週齢については野生型マウスと比べてA4gnt KOマウスで有意に発現が亢進している炎症関連分子とその受容体を中心に、A4gnt KOマウスと比較しながら検討する。
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