研究課題
本年度は,胃癌・食道癌の癌幹細胞性を規定する分子を同定し、新しい治療感受性・耐性診断系を確立することおよび癌幹細胞を標的とした治療展開を目指すことを目的として以下のとおり研究を実施した。1)Sphephoid形成を指標とした癌幹細胞性を規定する遺伝子の探索と発現・機能解析癌幹細胞の特性であるspheroid形成を指標として、胃癌細胞株(MKN-45、MKN-74)を対象に網羅的遺伝子発現解析を行い、spheroid形成細胞塊に特徴的に高発現するものとして、KIFC1, KIF11, KIF2C, KIF23等のkinesin遺伝子群を同定した。その内、KIFC1(Kinesin family member C1)は、分裂前中期の紡錘体の安定化に関与し、その消失で多極分裂が惹起されることが知られている。胃癌臨床検体においてKIFC1の発現は37%(41/114)で認められ、癌の進行度に相関し、予後不良の傾向にあった。さらに、癌幹細胞マーカーのCD44およびALDH1と有意な相関を認めた。KIC1のsiRNAノックダウンにより、増殖ならびにspheroid形成が抑制された。2)抗癌剤耐性で発現変動するBST-2の食道癌における発現・機能解析胃癌細胞株MKN-74の親株で過剰発現し、5-FU耐性株では発現が低下する遺伝子としてBST2 (Bone marrow stem cell antigen 2)を同定した。食道癌の27%(36/132)で過剰発現し、リンパ管内侵襲と相関することを見いだした。多変量解析において、BST-2陽性は独立した予後予測因子であった。siRNAノックダウンによる細胞生物学的検討により、BST2は癌細胞の増殖に関与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画通り、胃癌細胞株・食道癌細胞株について、通常の癌幹細胞マーカーによるFACSソートに加えて、癌幹細胞関連転移を制御する分子によるソートも開始している。癌幹細胞の特性として、spheroid形成、抗癌剤耐性などが挙げられる。spheroid形成を指標した網羅的解析から、KIFC1、KIF11をはじめとするkinesin遺伝子群を同定した。KIFC1については胃癌癌組織および細胞株を用いて、発現・機能解析を行った。さらに、抗癌剤耐性の克服に向けた研究として、CAST法による網羅的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の発現解析から、癌細胞で過剰発現し5-FU耐性で低下する遺伝子BST-2について、食道癌組織および細胞株を用いて、発現機能解析を行った。結果は、研究概要に示した通りである。
研究計画に従って実験を推進する予定である。癌幹細胞の特性のひとつである抗癌剤耐性に関しては、細胞株を増やしてCAST解析を行うとともに、BST-2以外のこれまでに得られた5-FU耐性関連遺伝子に関して研究を進めることとしている。Spheroid biologyを用いた解析では、本年度に同定したkinesin遺伝子群の内、KIFC1以外の遺伝子についても検討を行う。さらに、臨床病理学的事項との関連は、多数症例で解析を行なう。可能であれば、組織幹細胞を豊富に含むオルガノイドに遺伝子変異導入で発生する癌オルガノイドについても同様の解析を行いたい。技術的、設備的には問題なく遂行することができる。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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