研究課題
本年度は、胃癌・食道癌の癌幹細胞性を規定する分子の同定、新しい治療感受性診断の開発、癌幹細胞を標的とした治療展開を目指し、以下のとおり研究を実施した。1)Sphephoid形成を指標とした癌幹細胞性を規定する遺伝子の解析:胃癌細胞株(MKN-45、MKN-74)についての遺伝子発現プロファイルからspheroid形成細胞に特徴的に高発現する遺伝子群を解析した。KIF11はmitotic kinesinのひとつである。胃癌臨床検体におけるKIF11の発現は72%(119/165)で認められ、腸型形質と有意に相関していた。KIF11-siRNAノックダウンにより、増殖ならびにspheroid形成が抑制された。食道扁平上皮癌においても同様の知見が得られた。一方、膜蛋白であるIQGAP3は、胃癌の21%(34/165)に過剰発現し、胃型粘液形質、癌の進展と相関し、多変量解析により独立した予後不良因子であることが分かった。IQGAP3-siRNAノックダウンの解析から、AKT/ERK pathwayを介して増殖ならびにspheroid形成に関与していることが明らかとなった。さらに、MKN-1細胞株における解析から、あらたにSphephoid形成関連遺伝子として、DSG1、TDO2、IGFL4などを同定した。2)抗癌剤耐性で発現変動するMCOLN3の胃癌における発現・機能解析:胃癌細胞株MKN-74の親株と5-FU耐性株での遺伝子発現プロファイルを比較し、MCOLN3 (mucolipin 3)を同定した。胃癌の37%(48/130)で過剰発現し、癌の進展と相関することを見いだした。術後S-1化学療法施行例においてMCOLN3陽性は予後不良であった。MCOLN3-siRNAノックダウンにより、5-FUおよびpaclitaxel耐性は回復した。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、胃癌細胞株・食道癌細胞株について、癌幹細胞の特性であるspheroid形成を指標とし、CAST法解析、マイクロアレイ解析などの網羅的遺伝子発現解析を行い、spheroid形成細胞で特徴的に高発現する多数の遺伝子を同定している。昨年度に同定したkinesin遺伝子群については、KIFC1に加えてKIF11、KIF23に関して研究を進めた。KIF11については胃癌および食道癌の臨床検体ならびに癌細胞株を用いて、発現・機能解析を行った。また、同様に同定した膜蛋白IQGAP3についても同じく検討した。さらに、胃癌細胞株MKN-1のSpheroid形成を指標として、あらたに癌幹細胞性に関連する候補遺伝子を複数同定した。抗癌剤耐性の克服に向けた研究として、胃癌細胞株親株と5-FU耐性株のCAST法およびマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析から、5-FU耐性株で発現が亢進する遺伝子を複数同定した。そのうち、MCOLN3については胃癌組織および細胞株を用いて、発現機能解析を行った。結果は、研究実績の概要に示した通りである。
研究計画に従って実験を推進する予定である。Spheroid biologyを用いた解析では、kinesin遺伝子群のKIFC1、KIF11以外の遺伝子についても検討を行う。あらたに本年度に同定したSphephoid形成関連遺伝子、DSG1、TDO2、IGFL4等について、食道癌、胃癌における発現、機能解析を行なう。癌幹細胞の特性のひとつである抗癌剤耐性に関しては、MCOLN3以外のこれまでに得られた5-FU耐性関連遺伝子に関して研究を進めることとしている。さらに、臨床病理学的事項との関連は、多数症例で解析を行なう。可能であれば、胃癌臨床検体から樹立した癌オルガノイドを用いて同様の解析を行いたい。技術的、設備的には問題なく遂行することができる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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