研究課題
1.解析対象例の選定:対象はいずれも手術材料で、EGFR, KRAS, ALK変異のない腺癌30例、小細胞癌25例、および扁平上皮癌のうちEGFR・KRAS・DDR2の変異, ALK 融合遺伝子、FGFR1 増幅のないもの35例であった。これらの症例90例について、組織型、病理病期、予後情報、喫煙歴、アスベスト曝露歴、腫瘍歴、家族歴を、対象症例ファイルとしてまとめた。組織アレイの作製は、腺癌、小細胞癌が終了した。2.ゲノム不安定性の解析:腺癌30例のアレル量データを詳細に再解析し、ゲノム全体のアレル量の変化の程度により染色体不安定性の程度により分類した結果、軽度12例、中等度13例、高度5例となった。染色体不安定性が高度になるほど、有意に喫煙量が増加した。小細胞癌については、非喫煙者3症例の全エクソンシークエンスを計画中である。3.メチル化異常:ゲノムワイドメチル化解析については、腺癌30例、扁平上皮癌35例の中から、症例を絞って実施する方向で準備中である。小細胞癌25例については、予後と相関して層別化することができた。すなわち、メチル化の多い群(high CIMP群)は有意に予後不良であった。内在性レトロエレメントについては、LINE-1 のプロモータ部位のメチル化を検索し他の因子と比較している。4.非コードRNA の検索:腺癌については、アレイを用いて、長鎖非コードRNA(とmRNA)発現解析を行い、データを取得した。現在、非コードRNA の発現パターンと、臨床病理情報、ゲノム不安定データ、その他の因子との相関を総合的に検討中である。5.PD-L1、PD-1の発現と肺癌の予後:肺癌においても、免疫チェックポイント阻害薬の効果が注目されている。本年は、腺癌300例を対象に、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現と諸因子との関係を検討した。その結果、PD-L1高発現群では、喫煙者が多く、EGFR変異陰性例が多かった。またPD-L1発現は、喫煙者、EGFR変異陰性群でのみ、予後因子であった。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ予定通りに進捗している。採択以降、免疫チェックポイント阻害薬が注目されるようになり、その発現と諸因子(予後を含む)との関係も検討することとした。
ほぼ当初の予定通り推進する予定であるが、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーになると推定されるPD-L1の発現が、driver変異のない癌で高いことが判明したので、その方向の研究を目的に加え、ゲノム不安定性の解析・メチル化解析のうち、費用のかかるものについては、実施を再検討している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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