研究課題
がん化,感染,組織損傷等によって発現が誘導されるNKG2Dリガンド(NKG2DL)は,NK細胞,キラーT細胞,γδ T細胞に活性化シグナルを入れる主要なリガンドであり,生体が異常細胞を排除するうえで重要な役割を果たしている。研究代表者らは,これまでマウスで複数の新規NKG2DLを同定し,その一つであるH60cがdendritic epidermal T cellの活性化を介して皮膚・粘膜における免疫監視に関与していることを示してきた。今年度は,ここ数年で数多くの哺乳類種のゲノム配列が入手可能になったことを受けて,NKG2DL遺伝子ファミリー(MIC, ULBP, MILL遺伝子)の比較ゲノム解析を行った。系統発生学的に重要な位置を占める哺乳類29種を解析の対象とした。解析の結果,1)MIC遺伝子はマウス,ラットをはじめとする多くのげっ歯類で欠損しているが,他のほとんどの哺乳類種には存在すること,2)MIC遺伝子はすべてのげっ歯類で欠損しているわけではないこと,3)ウサギやナキウサギもMIC遺伝子を欠損していること,4)MIC遺伝子とは対照的に,ULBP遺伝子は検索したすべての哺乳類種に存在すること,5)MIC遺伝子と近縁であるが,NKG2DLとして機能しないMILL遺伝子は,げっ歯類の他にウマ,サイ,ツパイ,オポッサム等に存在するが,哺乳類種全体における分布は限られていること,6)NKG2DL遺伝子ファミリーのメンバーは,もともとすべて主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域内でコードされていたと考えられるが,現在はほとんどの種においてMIC遺伝子のみがMHC領域内でコードされていること,7)NKG2DL遺伝子ファミリーは真獣類と有袋類に存在するが,単孔類には存在しないこと等が明らかになった。
4: 遅れている
本研究科附属動物実験施設においてウイルス感染症が発生したため,NKG2D遺伝子ノックアウトマウスのほとんどを処分せざるを得ない事態に陥った。これにより実験の進行が大幅に遅れた。
メチルコラントレンにより誘導したマウス皮膚扁平上皮癌モデルを用いて,NKG2DLの腫瘍免疫における役割を解析するとともに,NKG2DL-NKG2Dシステムの胎盤形成における役割に関してNKG2D遺伝子ノックアウトマウス等を用いて解析していく予定である。
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