昨年度に引き続き、アポCIII・KOウサギの繁殖を行い、実験に必要なホモ接合体のKOウサギの準備ができ、ヘテロKOと野生型ウサギを用いて解析した。正常食下並びに高脂肪食を負荷した8週間後の血清脂質、リポ蛋白、アポ蛋白、動脈硬化発生におけるアポCIII欠損の影響についての検討を行った。 1.通常食の飼育下で、野生型ウサギに比し、雄アポCIII・KOウサギの血漿トリグリセリド値は野生型ウサギより有意に低下していたが、総コレステロール値及びHDL-Cの変化がなかった。雄KOウサギと比べ、雌KOウサギの血漿脂質の変化は軽度であった。雌雄の性差の変化については現在検討中である。超遠心法を用いて、ウサギのリポ蛋白分画を行った。野生型ウサギと比べて、アポCIIIの欠損ウサギのVLDL、IDL及びHDL2-3のトリグリセリド量が著しく減少した。また、アポCIIIの欠損ウサギのHDL2のコレステロール量も野生型ウサギより低下していた。ウエスタンブロットの解析では、各リポ蛋白におけるアポCIIIの分布を調べたところ、野生型ウサギのアポCIII は主にVLDLとHDLに分布しており、アポCIII・KOウサギにはアポCIIIの消失が確認できた。一方、アポCIII・KOウサギのVLDLの減少がアガロースゲル電気泳動で認められ、アポB-100減少が認められた。アポCIIIの欠損によりリポ蛋白代謝に及ぼす影響の機序については、現在検討中である。 2.野生型ウサギと比べて、アポCIII・KOヘテロウサギの血漿脂質の値が低く、アポCIII欠損によってVLDLのクリアランスが亢進されることが確認された。更にアポCIII・KO(ヘテロ)ウサギの動脈硬化の程度が野生型ウサギと比較して減少している傾向を示しており、高脂肪食を負荷したホモKOウサギの実験を全て完了させてから、明確な結論を出せるものと考えられる。
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