研究課題/領域番号 |
15H04722
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30516901)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / がん精巣抗原 / OR7C1 / BORIS |
研究実績の概要 |
平成28年度において、がん幹細胞標的療法におけるがん精巣抗原の意義を引き続き検討した。大腸がん細胞株からSide poulation (SP)細胞として分離した大腸がん幹細胞のをcDNAマイクロアレイ法にて網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、新規がん精巣抗原であるOR7C1の発見に至った。平成28年度においては、OR7C1特異的CTLがヒトがん幹細胞移植実験動物モデルにおいても、極めて高い抗腫瘍効果を示す事を確認した。siRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験では、OR7C1が大腸がん幹細胞の機能維持に重要であることが示された。これらの内容はOR7C1が大腸がん幹細胞標的免疫療法の候補分子として極めて重要である事が示唆される。同内容を Clinical Cancer Research 誌に発表した。 また、子宮頸がん幹細胞に発現するがん精巣抗原 BORISが、肺がんにも発現する事を見出した。肺がん幹細胞にはBORISサブファミリー6が発現する事を見出した。さらに臨床検体を用いた検討では、BORISサブファミリー6発現が高い症例では有意に予後が悪い事を見出した。BORISサブファミリー6特異的CTLが肺がん幹細胞を有効に障害出来ることを見出した。当該内容は、肺がん幹細胞標的免疫療法においてBORISサブファミリー6が重要であることを示唆する。同内容を PLoS One 誌に発表した。 これらの新規がん精巣抗原は、がん幹細胞の維持に重要な機能を有しており、がん幹細胞標的免疫療法の標的分子として理想的であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、ヒト大腸がん幹細胞、肺がん幹細胞、子宮頸がん幹細胞、卵巣がん幹細胞から精製したmRNAを用いて網羅的遺伝子発現解析を行ってきた。その結果、がん幹細胞には OR7C1, DNAJB8, SMCP, BORISといった新規がん精巣抗原が発現する事を見出した。驚くべきことに、これらのがん精巣抗原は、いずれも siRNAを用いてノックダウンすると、がん幹細胞維持に重要な働きを持っている事が示された。これらの研究結果は、治療抵抗性がん幹細胞に対して極めて期待できる標的分子である。また、免疫療法はこれらの候補分子を標的するのに理想的であると言える。MHCクラス1分子を発現しない精巣にのみ発現する分子だからである。今後これらの研究結果を背景に、がん幹細胞標的免疫療法の臨床応用への基盤としたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、さらにがん精巣抗原標的免疫療法の有効性について検討を進める。 OR7C1に関しては、HLA-A24に提示されるエピトープを報告しているが、HLA-A2に提示されるエピトープは未知である。本年度において、HLA-A2エピトープの同定を試みる。 BORISに関しては、HLA-A2エピトープを報告したが、HLA-A24エピトープが未知であるため、同定を試みる。 OR7C1, DNAJB8, BORISなど、これまで同定したがん精巣抗原を用いた免疫療法の基礎的データを取得するため、大腸がん、肺がん、胃がんなどの疾患において、それぞれのがん精巣抗原の発現頻度を検討する。
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