研究実績の概要 |
ヒト初代培養大腸がん細胞CRC21および、大腸がん細胞株 SW480, HCT15, HT29, HCT116 細胞、子宮頸がん細胞 CasKi, TC-S 細胞、ヒト肺がん細胞株 SBC3, SBC5 細胞から sphere 培養、side population (SP) 解析、ALDEFLUOR 法を用いて、造腫瘍能が高いがん幹細胞を分離した。がん幹細胞における遺伝子発現をcDNAマイクロアレイ法にて網羅的に解析した。その結果、がん幹細胞には、精巣関連分子が発現する事を見出した。OR7C1, DNAJB8, BORIS, SMCP などである。これらの精巣関連分子は、がん幹細胞および正常臓器には精巣のみに発現する、がん精巣抗原に分類される分子群である。大変興味深い事に、これらのがん精巣抗原を siRNA を用いてノックダウンすると、がん幹細胞の減少がみられ、免疫不全マウスにおける造腫瘍能を阻害した。すなわち、がん幹細胞維持に重要な機能を有する事を示唆する。さらに、精巣関連分子にコードされる抗原ペプチドをデザインし、抗原ペプチド特異的細胞障害性T細胞(CTL)誘導を試みた。その結果、OR7C1, DNAJB8, BORIS 特異的CTL誘導に成功した。がん精巣抗原特異的CTLを in vitro にてがん細胞と培養することにより、がん幹細胞を特異的に障害出来る事を確認した。さらに、免疫不全マウスヒト腫瘍移植モデルにおいて、がん精巣抗原特異的CTLを移入する事により、有意な抗腫瘍効果を発揮する事を見出した。これらの結果は、がん精巣抗原を免疫療法にて標的することにより、がん幹細胞に対する有効な治療となる可能性を示唆するものである。
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