研究課題
私たちが見出した、「分泌型イムノグロブリン欠損マウスでは内蔵型リーシュマニア症に対し乾癬抵抗性を示す」という現象の分子基盤を明らかにすることを本年度の目標とした。分泌型イムノグロブリンを欠損するマウスに内蔵型リーシュマニア原虫を感染させると、肝臓内の感染クッパー細胞において、CD11b発現量が対照と比較して増加することを見出した。CD11b発現量と細胞内の活性酸素種の活性が比例するとの先行報告に基づき、同活性に係るNADPH oxidase遺伝子群の発現を検討したところ、分泌型イムノグロブリンを欠損するマウスでは対照と比較し、多くの構成遺伝子で発現の上昇が確認された。そこで、分泌型イムノグロブリンを欠損するマウスにNADPH oxidase阻害剤を投与すると、有意に感染抵抗性が減弱することを見出した。この知見から、分泌型イムノグロブリンを欠損するマウスでは内蔵型リーシュマニア原虫感染に際し、肝臓においてインターフェロンγ非依存的に活性酸素種活性が上昇し、感染抵抗性となることを明らかにした。すなわち、分泌型イムノグロブリンは内蔵型リーシュマニア症の宿主肝臓において活性酸素種活性を抑制性に制御している可能性が示唆された。本研究課題を通して、難治性である内蔵型リーシュマニア症の感染早期の病態の一端を明らかにすることができたと考えている。分泌型イムノグロブリンがどのようにして活性酸素種活性を制御しているのかについては残念ながら明らかにすることはできなかったが、内蔵型リーシュマニア症の克服において、私たちが見出した制御点が治療標的の一つになる可能性があると考えている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS Biology
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American Journal of Pathology
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 506 ページ: 20~26
10.1016/j.bbrc.2018.10.055