研究課題/領域番号 |
15H04725
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鳥居 本美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (20164072)
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研究分担者 |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
石野 智子 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (40402680)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マラリア / 組換えタンパク質 / ワクチン / 伝播阻止 |
研究実績の概要 |
熱帯熱マラリア原虫の雄性生殖体および生殖体に発現するタンパク質(Pf75)のC末端側領域をコードする遺伝子をNF54株遺伝子を鋳型としてPCR増幅した。増幅した遺伝子産物をコムギ胚芽無細胞タンパク質発現プラスミドベクターに挿入してタンパク質発現用コンストラクトの構築を行なった。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて、GST(Glutation-S-transferase)融合タンパク質として大量合成を行った。合成したrPf75-D5を用いて、マウスおよびウサギの免疫を行って抗血清を作製した。作製した抗血清の熱帯熱マラリア原虫の生殖母体への反応性を確認した。ステージVまで培養により発育させた熱帯熱マラリア原虫の生殖母体を含む感染赤血球に、作製した特異抗体を添加し、更に生殖体への分化を誘導する培養液を加えた後に、顕微鏡下で雄性生殖体形成に対する影響を観察した。具体的には雄性生殖母体から放出される雄性生殖体が周囲の赤血球を巻き込んで活発に運動する部位の単位面積当りの数のコントロールとの比較検討を行なったが、両者に優位な差を見いだすことは出来なかった。熱帯熱マラリア原虫感染赤血球に抗Pf75-D5抗体を混合して再構築した血液を、人工吸血装置を用いてマラリア媒介蚊に吸血させた。十分に吸血した蚊のみを分別し、室温で砂糖水を与える条件で約8日間飼育した後に、蚊を解剖して中腸の外壁に形成されたマラリア原虫のオーシスト数の算定を顕微鏡下で行なった。抗Pf75特異抗体添加群とコントロールとした抗GST抗体添加群で形成されたオーシスト数を比較したところ、マウスの特異抗体において虫体数に有意の差が認められ、伝播阻止活性を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していたワクチン候補抗原部位に対する組換えタンパク質の作製、それを用いた特異抗体の作製を順調に行なうことが出来た。また、抗血清と感染赤血球を混合して再構築した血液を人工吸血装置を用いて吸血させた媒介蚊の体内で特異抗体による伝播阻止活性の有無についての検討を行った結果、一部の血清ではあるが伝播阻止活性を有するものが誘導できることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き伝播阻止活性を有する抗体の作製を継続して、抗血清による熱帯熱マラリア原虫伝播阻止活性の検定を行なう。また、標的分子の機能を解析するためPf75遺伝子欠損マラリア原虫の作出を継続する。 1)コムギ胚芽無細胞蛋白質合成系を用いた組換えPf75タンパク質と特異抗体の作製:熱帯熱マラリア原虫のPf75の全長および一部の組換えタンパク質を複数作製し、それらを抗原としてマウスおよびウサギを免疫して抗血清を作製する。 2)抗血清の反応性の検定:Pf75の組換えタンパク質および原虫タンパク質を抗原とするELISA法、IFA、Western-blot法などを実施して、抗体の反応性を確認するとともに、抗原を用いたアフィニティ精製を行なってより反応性の高い抗体を得る。 3)抗体による伝播阻止活性の検定:抗体と生殖母体を誘導した熱帯熱マラリア原虫感染赤血球とを混合したものを、人工吸血装置を用いて媒介蚊に吸血させる。十分に吸血した蚊を選別して飼育した後に、蚊体内で発育した原虫数を算定して、特異抗体による伝搬阻止活性を評価する。 4)Pf75遺伝子欠損原虫の作出と表現型の変化の検定:昨年に引き続いてPf75遺伝子を欠損する熱帯熱マラリア原虫の作製に取り組む。選択マーカーを挿入した遺伝子組み換えベクターを同調培養した熱帯熱マラリア原虫(NF54株)にBioRad GenePulserを用いた電気穿孔法によって導入する。これを選択薬剤であるWR99210を添加した培養液中で培養した後、限界希釈法によって原虫をクローン化する。作製した遺伝子組み換え原虫の生殖母体および生殖体における表現型の変化を観察することでPf75分子の機能解析をおこなう。
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