研究実績の概要 |
細菌の病原性制御機構の理解は、新しい作用機序の感染症治療薬を創製する上で重要である。本研究の目的は、新規RNA結合タンパク質による細菌の病原性制御機構の理解を目的としている。本年度は、カイコ殺傷能力を指標として同定した黄色ブドウ球菌の病原性因子CvfGについて、生化学的な機能解析を進展させた。前年度までに、CvfGがプリン塩基を有する2’,3’-環状ヌクレオチドを分解し、3’-リン酸ヌクレオシドを生成する2’-CPDase活性を有することを明らかとしていたが、その生化学的活性のタンパク質構造基盤は明らかではなかった。そこで、CvfGに対して相同性を有するタンパク質群を用いて、2’,3’-環状ヌクレオチド分解活性とタンパク質構造の比較解析を行った。大腸菌、好熱菌、サルモネラの相同タンパク質は、CvfGとは異なり、2’,3’-環状ヌクレオチドを分解し、2’-リン酸ヌクレオシドを生成した。一方、枯草菌の相同タンパク質は、CvfGと同様に、2’,3’-環状ヌクレオチドを分解し、3’-リン酸ヌクレオシドを生成した。構造比較の結果、大腸菌、好熱菌、サルモネラの相同タンパク質は、CvfGと異なり、基質ポケットの芳香族アミノ酸のヌクレオチド塩基に対する配向性が異なっていた。一方、枯草菌相同タンパク質は、基質ポケットの芳香族アミノ酸のヌクレオチド塩基に対する配向性がCvfGと同じであった。以上の結果は、CvfGタンパク質グループと大腸菌タンパク質グループの環状ヌクレオチド分解活性の違いが基質ポケットの芳香族アミノ酸により規定されていることを示唆している。
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