研究課題
私たちがマウス腸管から取得したW27 IgA抗体は、Lactobacillus caseiやBifidobacterium bifidumのようないわゆる善玉菌には結合せず病原菌を含む他の多くの細菌には結合して腸内細菌叢を良い状態へ変化させると予想される抗原特異性を持った抗体である。W27抗体が結合する、あるいは結合しない細菌群とそれらの細菌の代謝機能を明らかにすることができれば、宿主がIgA抗体を駆使して目指している良い腸内環境がいかなる状態か、を定義することができると思う。1、W27抗体投与実験前後の糞便由来のDNAを使って16S rRNA解析を行い、腸内細菌叢がW27投与により有意に変化するデータをすでに得ている。本支援では同じサンプルを用いて、腸内細菌叢のメタゲノム解析を行い、抗体の経口投与前後の腸内環境の違いを細菌の種類だけではなく微生物の機能という観点から詳細に検討する。W27投与マウス 4匹の抗体投与前後、計8サンプルのメタゲノム解析を行った。2、腸管内容物をIgA抗体に対する抗体で染色してIgA結合細菌群とIgA非結合細菌群にセルソーターで分離する事が可能である。この方法を応用して、W27 IgA抗体による腸内細菌叢制御の選択基準を明らかにすることができると考える。具体的には、IgAが全く腸管内に存在しないAIDノックアウトマウスの盲腸内容物をW27抗体で染色した。セルソーターでW27抗体結合細菌とW27抗体非結合細菌に分離し、DNAを抽出後に16S rRNA解析とメタゲノム解析を行った。AIDノックアウトマウス4匹からサンプルを抽出し、計8サンプルそれぞれのメタゲノム解析と16S rRNA解析を行った。いずれもデータの取得を終了しており、現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の実験計画のウエット実験部分はゲノム支援を受け、データを予定どおり取得できた。16S rRNA解析の結果から、W27抗体が結合する細菌と結合しない細菌間には有意な差があることは明らかであり、これはすでに発表した論文の結果と一致している。メタゲノム解析から得られたW27結合菌と非結合菌の差に関する考察を行っている。
当初の実験計画のウエット実験部分はほぼ完了している。得られたメタゲノム解析の膨大なデータをどうまとめるか、に注力する。これにより、腸管IgA抗体が腸内細菌叢を制御する大きな目的を明らかにし、生体が追求する良い腸内環境を定義したい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Gut Microbes
巻: - ページ: -
10.1080/19490976.2017.1310357
Nature microbiology
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実験医学
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生物の科学
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http://bsw3.naist.jp/shinkura/