研究課題/領域番号 |
15H04734
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
秋山 徹 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 感染症免疫遺伝研究室長 (20246466)
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研究分担者 |
切替 照雄 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (50192563)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レンサ球菌 / 糖尿病 / in vivoマウスモデル / サイトカイン |
研究実績の概要 |
Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis (SDSE)は致命率の高い劇症型感染症(STSS)の原因菌である。疫学調査の結果、レンサ球菌による侵襲性感染症では、A群レンサ球菌(GAS)よりもSDSEの分離頻度が高いことが報告されている。またSDSEによる侵襲性感染症は糖尿病などの基礎疾患を持つ高齢者で特に高頻度である。糖尿病モデルマウスを用いた予備解析の結果、野生型マウスと比較して、糖尿病マウスはGASよりもSDSEに感受性であることが判明した。SDSE感染時のマウス遺伝子発現を網羅的に解析したところ、野生型マウスと比較して、糖尿病マウスでは、炎症状態が亢進していることを示す、SDSE特異的プロファイルが得られた。糖尿病マウスでは、GAS感染時よりも、SDSE感染時に炎症性サイトカインが多量に産生されることも明らかになっている。本研究の目的は、このようなSDSE特異的な糖尿病マウスにおける高病原性の原因と責任分子を明らかにすることである。本年度は昨年度までに実施した、マイクロアレイやサイトカインアッセイの結果を元に、SDSE特異的な糖尿病マウスにおける応答プロファイルの原因となる経路を、パスウェイ解析およびオントロジー解析により推定した。またこれらのプロファイルが培養細胞系でも一部再現可能であることを確認した。これらのサイトカイン誘導は細胞壁成分が寄与していることを確認した。さらにSDSEはGASとの比較で、in vivo投与時に急激な血糖上昇を発生させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通り、サイトカイン誘導に関与する分子の同定を達成し、さらにSDSEがin vivo投与時に血糖上昇を誘導するという新しい知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
マウス糖尿病モデルのSDSE特異的感受性化機構の研究:平成28年度までに同定したSDSE特異的糖尿病マウスの炎症プロファイルに寄与するパスウェイの機能を、引き続きレポーターアッセイで解析する。これらの解析ではTLR, NLRまたはインフラマソームに関連する経路が特定されると予想されるので、これらの経路の構成因子について、ウエスタンブロッティングなどで発現変動を蛋白質レベルで検証する。サイトカインがSDSE特異的マウス高感受性化に重要な役割を果たしていることが明らかになった場合には、サイトカイン本体や、その受容体の機能を抑制する中和抗体が研究、ひいてはSDSE劇症型感染症の予防と治療に有用と考えられる。そこで当該因子の機能を抑制するモノクローナルまたはポリクローナル中和抗体を作製し、SDSE感染糖尿病マウスモデルで、その治療効果を検証する。 SDSE特異的な炎症性プロファイルを誘導するSDSE因子の同定:SDSEが最終的に病原性を発揮するためには、菌が生存している必要があることが明らかになっている。そこで、平成27年度に開始した因子の精製をベースにしたアプローチに加えて、マウスに腹腔投与したSDSE を回収し、RNAを抽出して、SDSEのカスタムマイクロアレイおよびRNA-seqを利用した網羅的発現解析を行う。同解析で、in vivoで発現変動を示す因子の中から、糖尿病マウスにおける病原性発揮に必要な因子を絞り込む。精製ベースのアプローチで同定された因子、および発現プロファイリングから同定された因子について、まず、SDSE臨床分離株間における遺伝子保有状況を検証する。一方、それらの機能を検証するため、これらの因子の欠損変異株を作成し、マウスモデルおよび細胞培養系を利用したサイトカインプロファイルの解析を行い、それらの因子の機能が病原性に寄与するかどうかを明らかにする。
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