研究課題
シグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)は、小胞体に局在する膜貫通型のペプチダーゼで、C型肝炎ウイルス(HCV)のコアタンパク質の成熟に必須であり、粒子形成に関与することが報告されているが、その詳細な検討はされていない。本研究では、SPPのウイルス増殖や病原性発現における役割を検討するため、SPP欠損肝細胞株とSPP欠損マウスを作製した。SPP欠損肝細胞株では感染性ウイルスの放出が完全に阻害され、SPPはHCV粒子放出に必須の宿主因子であることが示された。また、γセクレターゼ阻害剤の1つであるLY-411575がSPP阻害剤としても機能し、HCV粒子産生を阻害することが明らかとなった。また、コアタンパク質を発現するトランスジェニックマウス(CoreTg)にLY-411575を投与すると、インスリン抵抗性や脂肪肝を改善させた。さらに、CoreTgからSPPを1対欠損させると、インスリン抵抗性や脂肪肝を発症しなかった。以上の成績から、SPPはHCVの粒子産生だけでなく、病原性発現にも関与する事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
HCVのコアタンパク質がSPPにより切断されることはコアタンパク質の安定的な発現に必須であり、HCVの増殖だけでなく、病原性発現にも密接に関与していることが明らかとなった。SPP欠損細胞でHCVの感染性粒子の放出が完全に阻害されたことから、LY-411575のようなSPP阻害剤は、新規抗HCV薬となる可能性が示唆され、研究は順調に進展していると判断できる。
SPP欠損細胞におけるコアタンパク質分解機構を解明するため、PA28γやE6AP等プロテアソーム分解系以外に、ER-associated degradation (ERAD)経路に関与するE3ライゲースを、RNAiスクリーニングで検索し、ヒットした新規E3ライゲース欠損細胞をSPP欠損細胞で作製し詳細に解析する。前述の様に、HCVコア蛋白質を発現させた細胞に、SPPのプロテアーゼ活性を阻害することが知られている、LY-411575を処理すると顕著にコア蛋白質の発現量が減少した。さらに、CoreTgマウスにLY-411575を経口投与すると、肝細胞のコアタンパク質が減少する。そこで、CoreTgマウスで観察されるインスリン抵抗性や脂肪肝の発症に及ぼす、LY-411575の影響を検討する。
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Nat. Commun.
巻: 未定 ページ: 未定
Sci Rep
巻: 無し ページ: 無し
10.1038/srep16699
http://www-yoshi.biken.osaka-u.ac.jp