研究課題
これまでに、細胞のシグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)を阻害すると、C型肝炎ウイルス(HCV)のコア蛋白質は成熟できず、ユビキチンリガーゼのTRC8によってユビキチン化されてプロテアソームで分解されることを明らかにしている。未成熟なコア蛋白質が細胞内に蓄積すると、強い小胞体ストレスが誘導されることから、SPP/TRC8による蛋白質分解の生物学的意義を検討する。本年度は、CRISPR/Cas9を用いて、野生型マウスとAlb-CreSPPfl/fl マウスを背景に受精卵を調整し、TRC8を標的とするgRNAとCas9組換え蛋白質を導入して偽妊娠マウスに移植し、TRC8+/-マウス、Alb-CreSPPfl/flTRC8+/-欠損マウスを得た。これらのマウスを交配させ、欠損マウスの作製を現在進めている。また、SPP阻害剤の検討を進め、これまで使用していたLY-411575よりも強力にSPPを阻害するYO-01027を見出した。YO-01027を投与したコア蛋白質を発現するトランスジェニックマウスは、コア蛋白質の発現が抑制され、LY-411575と同様に脂肪肝の発症を改善することが示された。また、YO-01027はHCV感染細胞の粒子産生を顕著に抑制した。来年度は、YO-01027とSPPとの相互作用部位の同定とSPP/TRC8欠損マウスの表現系を解析する。
2: おおむね順調に進展している
研究は順調に進んでいる。
来年度はSPP/TRC8欠損マウスを作製し、交配を続けることでその表現系を検討する。欠損マウスの肝機能の変化、脂肪化や線維化の検討を行う。さらに、肝臓でコア蛋白質を発現させた際の肝機能への影響も検討する。また、SPPの構造予測を行い、これまでに同定したSPPの阻害活性を示す化合物とのドッキングシュミレーションを行う。得られた候補の相互作用部位に変異を導入したSPP変異体を作製し、化合物による阻害活性を検討する。また、SPP阻害剤による効果を、様々な遺伝子型のHCVで検討するとともに、SPP阻害剤に対する耐性ウイルスの出現の可能性を検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Nature Communications
巻: - ページ: -
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