研究課題
平成27年度には、もともとAPOBEC3Gを発現するヒトリンパ球系細胞およびAPOBEC3Gをノックダウンした細胞を用い、サルMamuA1*065:01拘束性SIV CTLエピトープを標的とするCTL反応の解析を行い、APOBEC3G発現細胞では、HIV Vifに連結されたエピトープを標的とするCTL反応が効率よく生じることを示す極めて斬新な結果を得た。平成28年度には、この結果をさらに検証する目的で、もともとAPOBEC3Gを発現しないHeLa細胞を用い、上記と別のヒトHLA-A*2402拘束性HIV CTLエピトープを標的とするCTL反応の解析を行った。まず、HIV Vif抗原、HIV Vifにエピトープを連結した抗原、あるいはAPOBEC3G結合能を有しないVif変異体にエピトープを連結した抗原を、EGFPとともに発現するベクターを構築した。HLA-A*2402発現HeLa細胞あるいはAPOBEC3Gを導入したHLA-A*2402発現HeLa細胞を作製して、上記で構築した発現ベクターを導入した。これらの細胞を各々エピトープ特異的CTLと共培養の後、EGFP陽性細胞頻度を指標として細胞傷害度を測定して、HIVエピトープを標的とするCTL反応の比較検討を行った。その結果、APOBEC3Gを発現しないHeLaでは、Vifーエピトープ連結抗原導入細胞も変異Vifーエピトープ連結抗原導入細胞も同様な細胞傷害を示したが、APOBEC3Gを発現させると、Vifーエピトープ連結抗原導入細胞のみ細胞傷害が増強された。この結果は、HIV Vifに連結されたエピトープを標的とするCTL反応が、APOBEC3GとVifの相互作用により増強されることを確認するものである。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度にAPOBEC3Gノックダウンの系で見出された新知見を、平成28年度には、別のエピトープでAPOBEC3G発現の系で検証することができた。本結果は、CTL標的エピトープの提示に宿主抑制因子が関与することを示すもので、学術的に斬新かつ重要な成果である。今後、当初の計画にしたがい、本結果の機序解析を推進する計画である。
これまでの研究で、Vif連結エピトープに対するCTL反応は、標的細胞のAPOBEC3G発現により増強されることが明らかとなった。今後はまず、HIV複製過程でも同様の結果が得られるかどうかを確認する目的で、VifをHIVゲノムより発現させる系で検証を行う。一方、上記のAPOBEC3Gの影響に関する結果が、抗原提示効率への影響に基づくものであることを調べる目的で、エピトープ提示効率を直接測定する手法の開発を検討する。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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