平成27ー28年度には、もともとAPOBEC3Gを発現するヒトリンパ球系細胞およびAPOBEC3Gをノックダウンした細胞を用い、サルMamuA1*065:01拘束性サル免疫不全ウイルス(SIV)細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープを標的とするCTL反応の解析を行い、APOBEC3G発現細胞では、HIV Vifに連結されたエピトープを標的とするCTL反応が効率よく生じることを示す極めて斬新な結果を得た。さらに、もともとAPOBEC3Gを発現しないHeLa細胞およびAPOBEC3G発現ベクター導入HeLa細胞を用い、上記と別のヒトHLA-A*2402拘束性CTLエピトープを標的とするCTL反応の解析を行い、HIV VifのC末端に連結されたエピトープを標的とするCTL反応が、APOBEC3G発現により増強されることを確認した。これまでの実験は、センダイウイルスベクターやアデノウイルスベクターを用いて抗原を強発現したものを標的細胞としていたが、平成29年度には、HIV分子クローンのvif末端にエピトープを導入した系を用い、HIVのcontextで抗原を発現した細胞を標的とした場合でも、Vif由来エピトープの抗原提示がAPOBEC3Gにより増強されることを明らかにした。一方、APOBEC3Gと相互作用できない変異Vifに連結したエピトープの提示はAPOBEC3Gの影響を受けないことも確認した。なお、質量分析によりエピトープ提示量を解析する系については、感度の問題で容易ではないことが判明したが、ペプチドパルスによる抗原提示については検出できることを明らかにした。本研究は、HIV抗原と相互作用する宿主APOBEC3GがCTL標的の抗原提示に関与するという新規概念を示すものとして重要である。
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