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2015 年度 実績報告書

ヒトノロウイルス感受性細胞の樹立とレセプター探索

研究課題

研究課題/領域番号 15H04738
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

片山 和彦  国立感染症研究所, ウイルス第二部第一室, 室長 (60342903)

研究分担者 中西 章  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (60397049)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードノロウイルス / レセプター / ネズミノロウイルス / MNV / ヒトノロウイルス / HuNoV / CRISPR/Cas9 / ホモログ
研究実績の概要

ヒトに感染するノロウイルス(HuNoV)は、冬型の急性胃腸炎、食中毒の原因ウイルスとして知られている。HuNoVは、感受性を示す培養細胞が無いため、基礎的研究に困難を極めている。申請者が科学研究費(基盤C)を受けて成功させた世界初のHuNoVとネズミノロウイルス(MNV)のリバースジェネティックスシステム(RGS)は、細胞内でのノロウイルス(NoV)の複製、感染性粒子作出を実現するとともに、GFPやルシフェラーゼ遺伝子でのウイルスゲノムラベルにより、NoV複製阻害剤の探索や、感受性細胞の探索を可能とした(PNAS 2014 Sep 23;111(38):E4043-52, Epub 2014 Sept 5.)。本研究では、このRGSを基盤技術として用い、HuNoV感染感受性細胞株の樹立、NoVレセプター分子の同定を目指す。さらに、小動物感染モデルの確立も目指す。
今年度は、CRISPR/Cas9遺伝子ランダムノックアウトシステムによりMNV感受生細胞であるRAW264.7細胞のレセプター遺伝子をノックアウトすることで、MNV非感受性RAW細胞を作出し、その細胞で共通してノックアウトされている遺伝子を同定した。その遺伝子は、ヒト、サル、ネコ、ネズミの宿主の細胞をMNV感受生細胞に変化させるMNVのタンパク質性のレセプター分子である事が明らかになった。HuNoVのレセプターを検索するため、HuNoV感受生細胞の樹立を目指し、ヒト小腸バイオプシよりオルガンカルチャーを実施した。オルガンカルチャーの技術並びにヒト小腸細胞は、慶応大学医学部佐藤俊朗准教授より提供を受けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

MNVのRGSは、非感受生細胞であっても、また、ネズミ以外の動物種の細胞であっても、MNVゲノムを細胞内に送り込めば感染性粒子を算出可能であることを明らかにした。つまり、MNV感受生細胞と非感受生細胞の差は、MNVの細胞内部への侵入に関わるレセプター分子の有無である可能性を示唆する。そこで、MNVレセプター分子の検索をRGSで作出した遺伝的に均一なMNVと感受生細胞RAW264.7(RAW)細胞を用いて行った。CRISPR/Cas9でRAW細胞の遺伝子をランダムにノックアウトし、MNVを感染させた。MNVが感染したRAW細胞は死滅するが、レセプター分子がノックアウトされたRAW細胞は、生き残る。この原理を利用して、生き残った細胞に導入されたガイドRNA分子の配列を決定することで、レセプター分子をコードする遺伝子を同定した。同定したレセプター遺伝子を非感受性細胞に導入し、発現させると、非感受生細胞はMNV感受生細胞へと変化した。さらにMNVレセプター分子導入細胞の株化を行った。
我々は、MNVレセプター分子を同定した。現在、同定されたレセプター分子のヒトホモログがHuNoVのレセプターとして機能するか否か研究を継続している。また、我々の同定したMNVレセプター分子に関して、特許申請を行った。現在、論文投稿が進行中である。

今後の研究の推進方策

我々の同定したMNVレセプターは、CDファミリーのタンパク質分子であった。MNVのレセプター候補として報告されているシアル酸や糖脂質は、MNVの細胞への接着に関与するかもしれないが、感染に必須な分子ではなかった。MMVレセプターは動物種によってアミノ酸配列が異なる。この分子の種による多様性を利用し、MNVが宿主を決定している可能性が高いと思われた。現在、ヒトホモログがHuNoVのレセプターとしての機能を有するかどうかを調べている。
次年度以降は、HuNoVのレセプター分子探索についても同様の手法によって同定可能かもしれない。そこで、平成27年度導入に成功したヒト腸管バイオプシのオルガンカルチャーにより作出する試験管内ヒト腸管(エンテロイド)を用いて、HuNoVの感染実験を行う。感染実験が成功すれば、HuNoV感染細胞をシングルセルソーティングし、非感染細胞とトランスクリプトーム解析で比較検討することにより、HuNoVレセプター候補分子のスクリーニングが可能となる。また、MNVと同様にCRISPR/Cas9システムによるHuNoVレセプター同定を試みる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Examination of a plasmid-based reverse genetics system for human astrovirus.2015

    • 著者名/発表者名
      Chapellier B, Tange S, Tasaki H, Yoshida K, Zhou Y, Sakon N, Katayama K, Nakanishi A.
    • 雑誌名

      Microbiol Immunol.

      巻: 59 ページ: 586-596

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12317

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Molecular Evolution of the Capsid Gene in Norovirus Genogroup I.2015

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi M, Yoshizumi S, Kogawa S, Takahashi T, Ueki Y, Shinohara M, Mizukoshi F, Tsukagoshi H, Sasaki Y, Suzuki R, Shimizu H, Iwakiri A, Okabe N, Shirabe K, Shinomiya H, Kozawa K, Kusunoki H, Ryo A, Kuroda M, Katayama K, Kimura H.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 5 ページ: 13806

    • DOI

      10.1038/srep13806.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Development of norovirus in cell replication efficiency monitoring system based on reverse genetics system2015

    • 著者名/発表者名
      戸高玲子、村上耕介、朴英斌、吉田和央、中西章、片山和彦
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] Functional Analysis of Human Norovirus RNA-dependent RNA Polymerase2015

    • 著者名/発表者名
      朴英斌、戸高玲子、芳賀慧、下池貴志、福士秀悦、染谷雄一、横山勝、佐藤裕徳、河合文啓、朴三用、片山和彦
    • 学会等名
      日本ウイルス学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2015-11-22 – 2015-11-24
  • [産業財産権] ノロウイルスが増殖可能な遺伝子組換え培養細胞、及び、その用途2016

    • 発明者名
      平成28年2月2日
    • 権利者名
      平成28年2月2日
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      P0046
    • 出願年月日
      2016-02-02

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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