研究実績の概要 |
ヒトに感染するノロウイルス(HuNoV)は、冬型の急性胃腸炎、食中毒の原因ウイルスとして知られている。HuNoVのレセプター分子が同定できれば、感受性細胞の樹立が可能となり、研究の障壁を取り払うことができる。 4年間の研究において、HuNoVの近縁なウイルスであるネズミノロウイルスのレセプター分子CD300lf, CD300ldの同定に成功した(PNAS 113(41):E6248-E6255, 2016)。CD300lf, ldのヒトホモログがHuNoVのレセプターである可能性を調べたが、その機能は有さなかった。HuNoVレセプター分子を検索するため、慶応大学の佐藤らより、ヒト腸管オルガノイド(HEO)の供与を受け、HEOを用いたHuNoVの増殖培養増殖系の開発に成功した(特願2016-163711)。2018年度は、特殊な蛍光標識ウイルス様中空粒子(VLP)を用いてHEOに含まれるHuNoV感受性細胞をラベルして分取することに成功した。感受性細胞と非感受性細胞のmRNAトランスクリプトームサブトラクション解析を実施し、転写変動2倍以上を示した遺伝子の内、膜タンパク質もしくはそれに関与する18遺伝子を、HuNoVレセプター候補遺伝子としてピックアップした。これらの遺伝子のクローニング、ノックアウト用のgRNAの準備を進行させた。上位4候補遺伝子のノックアウトを順次試行しHuNoV増殖阻害効率を測定したが、有意に増殖効率に変化を与える遺伝子は見出せなかった。一方、感受性細胞のcDNAライブラリーを作製し、株化培養細胞に導入して特殊な蛍光標識VLPを取り込み、蛍光を発する細胞に導入されたcDNA配列を解析したところ、細胞膜の変形に関わる2種類の遺伝子が同定された。しかし、HuNoVのレセプター同定には至らなかった。
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