研究課題
特殊環状ペプチドiHA-100がインフルエンザウイルス増殖を抑制するメカニズムを明らかにするため、ウイルスが高効率で感染・複製可能なMDCK細胞を用い、ウイルス感染環のどこの段階を阻害しているかについて詳細な解析をおこなった。インフルエンザウイルスが細胞に吸着後、侵入から脱殻までに要する時間については複数の論文において詳細が明らかにされている:細胞吸着後20分でエンドサイトーシスを完了、その後初期エンドソームと融合しウイルス粒子が酸化を受けるまでに60分を要する。吸着後90分でウイルス粒子はエンドソーム膜と融合し、3時間で脱殻を完了する。脱殻により細胞質へとリリースされたウイルスゲノムは核内へと移行し、ゲノム複製をおこなう。これらの知識を踏まえて、様々な異なるタイミングでiHA-100を培養上清に添加する実験をおこなったところ、ウイルス吸着前および直後の添加により完全にウイルス感染を阻止することが判明した。さらに細胞内侵入後、エンドソーム膜と融合を開始する感染吸着後90分に添加した場合においても強い抑制効果がみられ、iHA-100による抑制効果がみられないのは3時間後に添加した場合のみであった。これらの結果は、ウイルスが細胞内侵入後もiHAは細胞膜を通過し、エンドソーム内に存在するウイルス粒子上のHAに結合し脱殻前の過程を強力に抑制することが可能であることを示すものである。以上より、iHA-100の作用機序として、細胞外に存在するウイルス粒子の感染性を中和するだけでなく、細胞内においてもHAと相互作用し侵入過程の複数の段階をブロックする新たな仕組みが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
iHA-100の作用機序として、細胞外に存在するウイルス粒子の感染性を中和するだけでなく、細胞内においてもHAと相互作用し侵入過程の複数の段階をブロックする新たな仕組みを明らかにした。
細胞内侵入後、エンドソーム膜と融合を開始する感染吸着後90分に添加した場合においても強い抑制効果がみられ、iHA-100による抑制効果がみられないのは3時間後に添加した場合のみであった。これらの結果は、ウイルスが細胞内侵入後もiHAは細胞膜を通過し、エンドソーム内に存在するウイルス粒子上のHAに結合し脱殻前の過程を強力に抑制することが可能であることを示すものである。今後はこの抑制機序について解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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