研究実績の概要 |
本研究では多能幹細胞からT前駆細胞に至る過程の中の「ミエロイド-T-B前駆細胞からミエロイド-T前駆細胞になる過程」に焦点をあてる。27年度には理研のFANTOM5プロジェクトに参加し、EBF1欠損多能前駆細胞を分化同期培養したサンプルをCAGE法で解析したデータを得て、著者のひとりとして報告した(Arner et al, Science, 329:1014, 2015)。さらにER-Id3導入によって多能前駆細胞からの分化をスイッチオン/スイッチオフできる系を完成させた(Ikawa et al, Stem Cell Reports, 5:716-727, 2015)。この成果は本課題の実験系として用いた。また28年度にはポリコムを欠失させるとT前駆細胞がB前駆細胞に運命転換することを報告した(Ikawa et al, Gene Dev, 30:2475, 2016)。この成果は計画どおりではないが、同じ分化過程を対象としたものであり、関連する成果であると考えている。最終年度である29年度には、計画していたsnai1とsnai2のコンディショナルダブルノックアウトマウスが作製できた。しかし、結果は残念ながらT細胞分化に関しては表現型がみられなかった。一方、29年度にはT前駆細胞でポリコムを欠失させると最終的にはミエロイド系細胞に運命転換するという、次につながる成果も得られた。期間全体として、上記のsnai1snai2KOマウスのように期待通りの結果が得られなかった課題もあるが、計画通りの成果(Stem Cell Reports, 2015)、計画通りではないが関連する成果(Gene Dev, 30:2475, 2016)も上がっており、さらに最終年度には次につながる知見も得られたことから、研究の総体としては、おおむね順調に成果があがったと考えている。
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