研究課題
本研究で、RabGDIαと呼ばれるタンパク質を免疫沈降・質量分析法で同定しました。次にRabGDIαの生体内での役割を検討する目的で、マクロファージや好中球などで特異的にRabGDIαを欠損するマウスを作製しました。RabGDIα欠損マウス由来のマクロファージではIFN-γ刺激によって起こる免疫反応(トキソプラズマ原虫数の低下)が、対照群と比較して、より増強しており原虫数はさらに減少していました。次に対照マウス群が耐えることができず30日程度で死亡する高力価(通常よりも多い原虫数)のトキソプラズマをRabGDIα欠損マウスに感染させ経時的に生存率を測定した結果、RabGDIα欠損マウス群では有意に生存期間が延長し最終な生存率も対照マウス群に比べて高いことがわかりました。次にRabGDIα欠損細胞で、どのようなメカニズムによってIFN-γ依存的な原虫数低下の増強が起こっているかを調べてみました。トキソプラズマの寄生胞を破壊するタンパク質群として知られているIFN-γ誘導性GTP分解酵素「IRGとGBP」の寄生胞への動員を検討した結果、IRGの一つであるIrga6とGBPの一つであるGbp2の寄生胞への動員率が、RabGDIα欠損細胞では対照群に比較して有意に高いことを見出しました。またGbp2とIrga6の関係が不明であったことから、Gbp2欠損細胞を作製しIFN-γ刺激によるIrga6の寄生胞への動員率を検討したところ、Gbp2欠損細胞では野生型細胞に比べて低かったことから、Gbp2はIrga6のトキソプラズマ寄生胞への動員を補助である(すなわち、Gbp2はIrga6にとってはアクセルの役割を果たす)ことがわかりました。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究成果を、米国の科学雑誌 『Proceedings of the National Academy of Science of the USA (PNAS)』 (邦名・・・米国科学アカデミー紀要)にオンライン掲載できたため。
引き続き、IFN-γによる宿主細胞免疫機構を解析する。とりわけ、トキソプラズマ原虫のみならず、その他の空胞形成病原体に対する免疫系にも当てはまるかどうかに着目して試験する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 112 ページ: E4581 E4590
doi: 10.1073/pnas.1510031112.