炎症反応は適切な抑制機序により終息することが生体維持において重要であり、このシステムの破綻が自己免疫疾患等の炎症病態に繋がると考えられる。B細胞は自己抗体の産生などにより、自己免疫疾患や炎症疾患の病態悪化因子として捉えられることが多いが、近年、逆に炎症を抑制するB細胞(制御性B細胞)の存在が明らかになり、非常に注目されている。特に、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10(IL-10)を産生するB細胞は、多発性硬化症や関節リウマチ、糖尿病などの疾患モデルマウスの炎症反応や腫瘍免疫を抑制することが明らかになっている。抑制機能を有するB細胞の研究は、その新規性に加え、病態との関連が示唆されていることから国内外を問わず精力的に研究が行われているが、「制御性B細胞の実体およびその抑制メカニズム」は未だ不明である。本応募課題では自己免疫性炎症疾患モデルマウスを用いて、IL-10産生制御性B細胞の性状および機能解明と、IL-10以外の新規抑制機序の同定を行い、制御性B細胞の包括的理解を目指す。さらに、本研究成果を基盤に、ヒト制御性B細胞の実体解明と疾患病態への関与を明らかにし、新規治療・診断法の開発への可能性を検討する。 当該年度は、IL-10産生B細胞を生きたまま同定・単離出来る方法を確立し、さらに、in vitroの培養で分化誘導する方法を立ち上げた。また、IL-10以外の抑制機序を網羅的に探索することによりいくつかの候補を同定した。そのうちの一つに関しては、B細胞特異的なノックアウトマウスの樹立を行っているところであり、機能解析を遂行する準備が整いつつある。
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