研究課題/領域番号 |
15H04754
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
古郡 規雄 (安井規雄) 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (20333734)
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研究分担者 |
猿渡 淳二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (30543409)
土嶺 章子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 科研費研究員 (60649044)
菅原 典夫 弘前大学, 医学研究科, 研究員 (80431435)
大里 絢子 弘前大学, 医学研究科, 助教 (80597162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬物応答性 / 抗うつ薬 / 遺伝子 / パーソナリティ |
研究実績の概要 |
薬物治療反応の予測可能性を性格特性と薬物動態の双方の観点から試みた。 これまで多くの研究がうつ病性障害の治療反応性を予測する試みを行ってきた。われわれは人格特性に注目した。今回の研究では、10の項目を再分析し、カットオフ値を示すことを目指した。73例のうつ病患者にパロキセチンの10-40 mg/dayを6週間投与し、Temperament and Character Inventory(TCI)を施行した。TCIのアイテム174、137、70、237、106、191、34、232、161および215は治療反応と関連した。されに、最も予測能の高いモデルを創出した。ROC曲線のAUCは0.825、オッズおよび尤度比は19.3および8.86であった。本研究より、人格特性により治療反応性の一部が予測できることを示した。 一方、ポピュレーションPKアプローチを用いた日本人集団におけるパロキセチンの薬物動態学的(PK)変動に対する異なるCYP2D6遺伝子型の影響の程度を評価した。CYP2D6*1、* 2、* 5、* 10と*41の対立遺伝子頻度はそれぞれ39.4、14.5、4.5、41.1および0.6%だった。PMはいなかった。1コンパートメントモデルを用いた場合、見かけのKm値は他のCYP2D6遺伝子型のCYP2D6*10/*10の遺伝子型をもつ患者で20.6%減少した。CYP2D6*5はPKパラメーターに影響を及ぼさなかった。本研究では、予想外に、パロキセチン定常状態血中濃度はCYP2D6*10/*10遺伝子型の患者で低くなった。しかしながら、これらの変化は臨床上大きな変化をもたらすものではないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗うつ薬の血漿濃度測定を測定し、薬物動態学的遺伝子の多型を解析し、一定の成果が得られた。さらには人格特性と治療反応性においても有意な所見が得られ、一定の成果が得られた。これらはともに国際誌に発表されている。 また、バイオマーカー(BDNFとCREB、リン酸化CREB)をうつ病者と健常者から採取解析し、現在論文作成中である。 一方、うつ病患者から医療リテラシーに対する認識についてアンケート調査を終了し、現在解析に入った。
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今後の研究の推進方策 |
PK-PD-PGxモデルを構築し、PK-PDにおけるPD関連遺伝子と他の患者要因の寄与率を算出す。PK-PD-PGxにおける上述のうつ病感受性遺伝子やメタボリック症候群、QT延長症候群感受性遺伝子と他の患者要因の寄与率を算出する。抗うつ薬がうつ病初期治療の上でどの病態に影響を及ぼすか、さらに薬理作用との関連に焦点を当て、研究成果をまとめる。また、解析デ-タより薬物治療を予測する指標として有用であるかを検討し、その臨床応用性について考察する。また、他の中枢神経薬における薬物療法に外挿できるか否かを考察する。 各項目同士の関連について検討を行う。たとえば、薬物血中濃度とパーソナリティの関連を調べることにより服薬コンプライアンスに関連するパーソナリティを抽出する。また、副作用とパーソナリティの関連を調べることにより副作用を訴えやすい人格的特徴を抽出する。 さらには、うつ病患者から医療リテラシーに対する認識を解析し、どの要因が医療資源にアクセスする難しさになっているのかを同定していく。
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