研究課題
肺線維症におけるPGE2濃度調節因子であるプロスタグランジン輸送体(OATP2A1/SLCO2A1)が果す役割を解明するため、ラットから調製した1型肺胞上皮細胞様細胞(AT1-L) をトランスウェル上に、ラット肺線維芽細胞(FB)をその裏面に共培養した肺胞上皮モデルを構築し、PGE2のAT1-L膜透過がOATP2A1阻害剤により有意に阻害されることを示した。また、本モデルを用い線維化に重要なTGFシグナルに対するPGE2の影響をOATP2A1阻害剤BSP存在下で検討した結果、TGF-β1のプラスミノーゲン活性化抑制因子(Pai)-1 mRNA発現誘導効果は、AT1-L頭頂膜側へのPGE2の添加により有意に抑制されたが、BSP存存下でその効果は消失した。したがって、OATP2A1を介してAT1-Lを透過したPGE2はAT1-L側底膜側かFB上の受容体に作用し、TGF-β1の作用を抑制することが示唆された。さらに、TGF-β1処置によりヒト肺胞上皮由来A549細胞を用いた上皮間葉転換(EMT)モデルでは、OATP2A1タンパク質発現は有意に減少し、線維化を惹起したマウス肺で観察されたOatp2a1の発現減少と一致した。以上、肺胞上皮のOATP2A1はTGF-β1により負に調節される結果PGE2の膜透過が減少するため、EMTが進行し肺線維化が悪化する可能性が示唆された。肺線維症危険因子であるタバコの煙抽出物を用いた検討により、OATP2A1の発現や機能が抑制されたことから、喫煙負荷による線維化とOATP2A1との関係解明が今後の課題である。一方、構造が複雑な肺組織に代わり脳実質組織おいて、マウスに微小透析法を実施し、OATP2A1が組織間質液中PGE2濃度を調節することをin vivoで明らかにすることができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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