研究課題
検体検査の多くは客観的な指標としてデジタルで表されるため、測定法によって測定値が異なると診療上大きな誤判断を起こす危険性がある。従って、どこでもいつでも同じ検査結果を得ることができるシステム構築が必要である。しかしながら、標準測定法がなく各社が個別の測定体系で試薬を市販している免疫学的検査項目は、検査値がまちまちで標準化がされていないし、標準化できないものも多い。そこで、検査データの標準化とハーモナイゼーション(これらをまとめて標準化と呼ぶこともある)を進めるために最適の手法を考案・構築し、モデル例として先鞭をつけることを目的とする。まず行うべきことは、どの項目を扱うか、世界情勢など情報収集を行い、各検査項目でどれくらいの試薬が市販されているか、市場調査、それぞれの測定系で用いられている標準物質の種類、測定系の種類などについて調べた。その結果、まだ十分な検討がなされていないトロポニンT、トロポニンI、NT-proBNP、IgE、フェリチン、プロラクチン、ACTHを対象とするのがよいと考えられた。そこで、それらについての詳細な情報収集を行い、患者検体の収集に取り掛かっている。次に、患者試料をどのように収集するかである。実際に複数の試薬での検討を行うためには、そこそこの血清量が必要である。実際には、患者の残余血清の量は多くはないため、2人分を加える、献血の残余血清をプール化して希釈液として使用するなどの方策を考えて、下準備を進めている段階にある。
3: やや遅れている
各検査項目でどれくらいの試薬が市販されているか、市場調査、それぞれの測定系で用いられている標準物質の種類、測定系の種類などについて調べるのに、試薬の添付文書だけではわからないことも多く、予想以上の時間がかかってしまったために、次のステップである検体収集が遅れてしまった。
トロポニンT、トロポニンI、NT-proBNP、IgE、フェリチン、プロラクチン、ACTHを標的として、それらの依頼があった患者血清を収集する。この単一の単一のヒト血清を集めたパネルは、いろいろな特徴を100%発揮する複数の混ぜ物のない試料からなり、マトリクス効果が相殺されることなくきれいに捉えることができるが、1人分の血清の量は少ないため、多くの方法で測定するのが困難になる。一方、プール血清は複数人の血清を混合するため、予期せぬ望ましくない反応や変化が生じたり、マトリクス効果については相殺されたり減じたりする。そこで、これらを組合せて使用する。すなわち、献血者血清を混合したプール血清と適宜混合して希釈に使用する。複数種の測定系による測定値の分布図を、ヒト血清パネル、プール血清と市販の精度管理試料、日本医師会の精度管理試料との関係(相互互換性;コミュータビリティ)を調べる。すなわち、横軸に複数測定法の平均値(代表値)を、縦軸に実測値−平均値をプロットする。各社の測定試薬でヒト血清パネルを測定した値の平均(All Procedure Trimmed Mean; APTM)を代表値とし、それとのバイアスがなくなるように補正したときの各試薬の個々の検体の測定値が収束すれば、ヒト血清パネルの使用によりデータの標準化・ハーモナイゼーションができると判断する。次に、プール血清で同様に補正したときに試薬間で収束すれば、プール血清の値付けによってデータの標準化・ハーモナイゼーションの道は開ける。さらに、市販のヒト血清ベースの管理血清がコミュータブルで補正が可能であれば、値付けされた管理血清を用いて標準化(厳密にはハーモナイゼーション)が可能となる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
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