研究課題
近年患者数が増加している好酸球性食道炎は,内視鏡による確定診断が困難である。現在唯一の確定診断法は,食道粘膜の多数箇所の生検による病理組織診断である。本疾患の患者は,その多くが高齢者であるため,抗血栓薬の服用者が多い。このため,生検による出血が大きな問題となっている。本研究課題では,ラマン分光法による,患者負担が少ない新規診断法の確立を目指す。ラマン分光法は,試料の前処理が一切不要な低侵襲的分光分析法で,5種類の白血球から好酸球の識別ができる。そこで,内視鏡に組み込めるファイバスコープ型ラマンスペクトル測定装置と,好酸球性食道炎の診断が可能なソフトウェアの開発を進める。これらの開発により,ラマン分光法に関する知識が無くても臨床応用可能な新規診断法を確立することが,本研究の目的である。平成28年度は,内視鏡に組み込み可能な装置の実現に向けて,生体試料のラマン測定に特化した医療ラマン装置の開発と,ヒトから採取した血液から分離した顆粒球のラマン測定を行った、医療ラマン装置は,ラマン分光法の専門家でなくても操作可能な自動測定装置を組み込んだものとした。装置のハードウェアは完成して,ラマン測定可能な状態になったが,自動測定可能なソフトウェアの開発を,年度内に終了することはできなかった。平成29年度のできるだけ早い段階で,自動測定ソフトウェアを装置にインストールして,島根大学医学部付属病院での運用開始を目指している。ヒト血液から分離した顆粒球のラマンスペクトルを多数測定して,エノシノフィルペルオキシダーゼのラマンバンドの有無によって,好酸球を判別できることを確かめることができた。
2: おおむね順調に進展している
医療ラマンに特化した装置開発を行うことができた。自動測定ソフトウェアのインストール後は,ラマン分光学の専門家でなくても測定可能な体制を整えることができる。ヒト血液から分離した白血球の中から,好酸球を判別可能であることも明らかにすることができた。内視鏡に組み込み可能なファイバラマン装置を開発するための基礎的データを集積するための環境はほとんど整えることができたので,今後は内視鏡に組み込み可能なファイアバラマン装置開発を開始したいと考えている。
内視鏡に組み込み可能なファイアバラマン装置を開発するにあたって,以下のような問題を解決する必要がある。1)好酸球の有無を判別可能な良好なラマンスペクトルの短時間測定,2)良好なラマンスペクトル測定の再現性の確保,3)測定したラマンスペクトルの自動解析上記の問題のうち,1)と2)はハードウェア開発で,3)はソフトウェア開発である。ハードウェア開発に関しては,協力企業の分光科学研究所との共同研究によって進める予定である。ソフトウェアに関しては,近年発展が著しい,機械学習法の考えを導入してビッグデータから,エオシノフィルペルオキシダーゼを自動抽出可能なソフトウェアの開発を考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 11件、 謝辞記載あり 11件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 23件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
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