研究課題
近年患者数が増加している好酸球性食道炎は,内視鏡による確定診断が困難である。現在唯一の確定診断法は,食道粘膜の多数箇所の生検による病理組織診断である。本疾患の患者は,その多くが高齢者であるため,抗血栓薬の服用者が多い。このため,生検による出血が大きな問題となっている。本研究課題では,ラマン分光法による,患者負担が少ない新規診断法の確立を目指す。ラマン分光法は,試料の前処理が一切不要な低侵襲的分光分析法で,5種類の白血球から好酸球の識別ができる。そこで,内視鏡に組み込めるファイバスコープ型ラマンスペクトル測定装置と,好酸球性食道炎の診断が可能なソフトウェアの開発を進める。これらの開発により,ラマン分光法に関する知識が無くても臨床応用可能な新規診断法を確立することが,本研究の目的である。本研究で,ヒト血液から分離した顆粒球のラマンスペクトルを多数測定して,エノシノフィルペルオキシダーゼのラマンバンドの有無によって,好酸球を判別できることを確かめることができた。また,内視鏡に組み込み可能な装置の実現に向けて,生体試料のラマン測定に特化した医療ラマン装置の開発を行ない,試作機の開発を(株)分光科学研究所と共同で行い,装置の運用を開始することができた。分光学の専門家でなくてもラマンスペクトル測定を可能とするために,試料の焦点の深さを自動的に決定するための技術(特許申請中)を開発し,自動測定を迅速に行うことができる体制を整えることができた。しかし,蛍光が強い生体試料のラマンスペクトルを良好に測定する際に,焦点の深さを自動的に決定することが困難であった。今後,この問題の解決と,プローブを用いた装置の開発に向けた研究を継続して行く予定である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy
巻: 187 ページ: 186~190
10.1016/j.saa.2017.06.060