研究課題/領域番号 |
15H04765
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60330932)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経障害痛 / 概日リズム / 副腎皮質ホルモン |
研究実績の概要 |
神経障害痛はヘルペスウイルス感染、糖尿病による末梢神経障害、がん細胞の神経への浸潤などによって発症し、軽い触刺激でも激痛を引き起こす「アロディニア」を特徴とする。アロディニアは根治が難しい慢性の痛みであり、患者のQOLを著しく低下させるが、その疼痛強度には概日性の変動が認められる。本研究では申請者らが発見した副腎皮質ホルモン作動性の因子「Glucocorticoid- regulated factor (GCRF:仮称)」に焦点をあて、平成28年度は主にGCRFによる疼痛の概日リズム形成機構と疼痛強度増悪のメカニズムについて解析を行った。その結果、坐骨神経を結紮した疼痛モデルマウスの脊髄内において、GCRFは副腎皮質ホルモン分泌の概日リズムに応じて発現が変動し、疼痛が悪化する時間帯において発現量は増大した。また、GCRFは脊髄内において主にアストロサイトに発現し、副腎皮質ホルモン分泌の変動に応じた概日リズムを示していた。更に、GCRFの発現増加はアストロサイト内のカルシウムイオン濃度を上昇させ、種々な分子の細胞外放出を促進させていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していた研究内容をほぼ達成でき、次年度移行の計画遂行に向けた基盤データを得ることができた。標的とした副腎皮質ホルモン作動性の因子 (GCRF:仮称)は、神経障害痛の悪化に関与している可能性を見出すこともできたため、平成28年度はGCRFの鎮痛標的としての評価とその活性を阻害する化合物の探索を行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の計画を実施する。 実験(1) GCRFの鎮痛治療標的としての評価:GCRFの機能阻害が、神経障害痛を伴う疾患モデル動物の疼痛強度を緩和し得るか否かについて検討を行う。アストロサイト選択的にGCRFの発現を抑制するレンチウイルスベクターを糖尿病性神経障害痛、がん性神経障害痛の各動物モデルの髄腔内に投与し、アロディニアを抑制できるか否かを検討する。糖尿病性神経障害痛モデルはストレプトゾドシンを単回腹腔内投与することで、がん性神経障害痛モデルはNCTC2472腫瘍細胞をマウスの坐骨神経周囲に移植することで作成する。
実験(2) 標的分子の発現または活性を阻害するシーズ化合物の探索:GCRFの発現または活性を定量化するin vitro評価系を確立し、九州大学に設置された創薬育薬最先端基盤研究センターの化合物ライブラリーを利用することで、GCRFの機能を抑制するシーズ化合物の探索を行う。GCRFの発現を阻害する化合物の探索は、GCRF遺伝子の転写活性調節領域を含むレポーターベクターを恒常的に発現するアストロサイトを作成することで行う。また、GCRFのキナーゼ活性を阻害する化合物の探索は、GCRFの標的タンパク質のリン酸化部位付近のペプチド断片を利用し、本ペプチドを用いたELISAシステムを作成することで行う
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