研究実績の概要 |
神経障害痛はヘルペスウイルス感染、糖尿病による末梢神経障害、がん細胞の神経への浸潤などによって発症し、軽い触刺激でも激痛を引き起こす「疼痛過敏」を特徴とする。アロディニアは根治が難しい慢性の痛みであり、患者のQOLを著しく低下させるが、その疼痛強度には概日性の変動が認められる。本研究では平成27年度に副腎皮質ホルモン作動因子であるSGK-1による疼痛過敏の概日リズム形成機構とそのメカニズムについて解析を行った。平成28年度には、SGK-1の機能阻害が神経障害痛を伴う疾患モデル動物の疼痛強度を緩和し得るか否かについて検討を行い、本因子が有力な鎮痛標的分子になり得ることを明らかにした。(Koyanagi et al., Nature Commun 7:13102, 2016)。これらの結果を受けて、平成30年度は、既承認薬ライブラリー(1,280品)の中からSGK-1の機能阻害活性を有する医薬品の探索を行い、有力な候補薬の発見に成功した。培養細胞、神経障害痛モデル動物を用いた検討の結果、発見した候補薬は、損傷した神経が投射する脊髄でのSGK-1の活性を抑制することで、疼痛過敏を緩和させることが示唆された。現在は国内企業との共同研究により、本医薬品の神経障害痛抑制薬としての適応拡大に向けた開発を進めている。
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