研究課題/領域番号 |
15H04769
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (00365181)
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研究分担者 |
武田 徹 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (10197311)
榎本 良治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80183755)
片桐 秀明 茨城大学, 理学部, 准教授 (50402764)
福士 政広 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (70199199)
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンプトンカメラ / 放射能汚染 / 放射線計測 / 分子イメージング / 画像再構成 |
研究実績の概要 |
本研究では、医療現場で使用可能な全く新しい高感度γ線コンプトンカメラの開発研究を独自に遂行中である。平成29年度(3年目)においては、開発に成功したオールスカイ型コンプトンカメラ技術を国際学術誌に発表し、更に、医療の現場へ応用するための具体的な検討を複数展開した。詳細を以下に示す。 (1)尿中放射能測定のための新しいin vitro測定法の開発: PET検査における診断精度向上を目的として、PET検査前に患者から排泄される尿中放射能を遠隔から可視化・定量化が可能かについて検討を行い、短時間かつ高精度で測定可能であることを実証した(論文投稿中)。 (2)塩化ラジウムRa-223薬剤の可視化:去勢抵抗性前立腺がんの骨転移に対するRI内用療法において国内で初めて認可されたα線放出放射性医薬品(塩化ラジウム)による放射能汚染箇所の可視化を遂行し有意性を実証した(IEEE Nuclear Science and Medical Imaging Conference 2018で発表予定)。 (3)高線量環境下における放射性セシウムの可視化:従来の3.5cm角CsI(Tl)結晶を小型で時間分解能の良いNaI(Tl)(φ1cm×1cm)に変更し、福島第一原発敷地内の1mSv/h環境下にて放射性セシウムの可視化測定が可能であることを実証した(論文投稿中)。 (4)次世代核医学診断装置開発に向けたR&D:10cm程度の小型被写体の近接撮影が可能なコンプトンカメラのためのカウンターコンポーネントの選定試験を遂行した。小型PMT (H10721-110、入射窓φ8mm)では、従来の大型PMT(H11432-100、入射窓φ1.5インチ)に比べ位置分解能は若干劣るものの、5cm先での位置分解能σは2mm程度となり、核医学診断装置への応用が可能な結果が得られた。現在、プロトタイプ製作中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目である平成29年度においては、当初の予定通り本測定技術を医療の現場へ応用するための具体的な検討を複数展開することができ、本手法の環境モニターとしての有用性を数多く実証することができた。更に、次世代核医学診断装置開発に向けたR&Dも順調に進んでおり、最終年度であるH30年度における進展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度(4年目)においては、これまでの3年間で構築した高感度オールスカイ型γ線コンプトンカメラ技術を用いることで、医療機関(北里大学病院、国立がん研究センター東病院)での積極的な環境放射能測定試験を展開し、本手法の有用性について総括を行う。また、核医学診断装置への応用に向けたR&Dを継続して遂行し、今後の臨床応用への可能性について総括を行う。具体的内容を以下に示す。 (1)尿中放射能測定のための新しいin vitro測定法の開発:PET診断精度向上を目的として、PET検査前に患者から排泄される尿中放射能をγ線コンプトンカメラで遠隔から可視化・定量化が可能であるかについて実験的検討を継続して行う。とりわけ、便器と患者を分離して撮影可能な高解像度型カメラの検討を遂行し研究の総括を行う。更に、将来の臨床研究を見据えて、本システムで測定した尿中放射能を実際の固形がん治療評価判定に応用するための準備研究を展開する。 (2)α線放出放射性医薬品(塩化ラジウムRa-223)による院内放射能汚染箇所の可視化:院内における塩化ラジウムによる0.1MBq程度以下の極低線量汚染箇所の可視化が可能な超高感度オールスカイコンプトンカメラを新たに製作し、院内での測定を通じて、最終的に、本手法の適用が可能であるかについて総括を行う。 (3)次世代核医学診断装置開発に向けたR&D:高い角度分解能を実現しつつ、10cm角程度の小型被写体の近接撮影が可能なコンプトンカメラの検討を継続して遂行する。 (4)新しい画像再構成法の検討:先に提案されているコンプトンカメラ用list mode ML-EM(Maximum Likelihood - Expectation Maximization)画像再構成法を、我々が提案するコンプトンカメラ技術に適用することで、再構成画像の画質向上が可能であるかについて検討を行う。
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