研究課題
本研究は、われわれが平成19年より継続している浜松出生コホート(N=1,250人)について、2歳までの発達検査から軽度~重度の運動あるいは言語の遅れが認められた18.1%の児(発達遅延群)の2歳以降の発達経過を認知神経的および脳機能イメージング(機能的核磁気共鳴画像:fMRI)を計測することにより発達を評価し、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)に特異的な発達軌跡の徴候について検討する予定であった。しかしながら、現在までMRI検査は検査を受ける児への負担が大きいため、難色を示す養育者が多く被験者の獲得が非常に困難であった。そのため、MRI検査に代替される検査法として、児にとっての負担が軽く、かつ脳機能の評価を行うことのできる近赤外光イメージング装置(near-infrared spectroscopy: NIRS)を用いるように計画を修正した。NIRSを用いた脳機能イメージング評価方法を確立するため、幼児でも実施可能であり、かつASDおよびADHDの病態に関連が想定される複合処理能力を評価する課題(複合的ルールマネージメント課題)を作成した。本課題の脳機能評価としての有効性を検証するため、健常成人を対象としてNIRSデータを収集した。さらに、NIRS計測に基づく脳機能評価の妥当性を確認するため、同様の実験パラダイムを用いて機能的MRIによるデータを収集した。これらのNIRSおよびfMRIのデータにより、両側の運動前野、腹外側前頭前皮質、背外側前頭皮質、吻外側前頭皮質を含む広域的な脳活動が再現され、脳機能評価法としての本課題の有効性が確かめられた。
2: おおむね順調に進展している
現在まで脳画像評価のためのMRI検査に難色を示す養育者が多く、被験者の獲得が非常に困難となったが、代替計測の手法を確立することにより解決した。定型発達成人(N=48)のNIRSデータ、および同じく定型発達成人(N=21)のfMRIデータにより、複合的ルールマネージメント課題を用いることで精度の高い脳機能評価ができることが確認された。そのため全体として順調な進展であるといえる。
今後は、定型発達成人を対象に実施した近赤外光イメージング装置(NIRS)および機能的MRIのデータ解析を完了し、論文化する。その一方で、小児を対象としたNIRS計測を進め、成人と小児における複合処理能力およびその神経メカニズムの比較を行う。発達遅延群の徴候と複合処理能力を基にした脳機能発達との関連について明らかにしていく。
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