研究課題/領域番号 |
15H04783
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 裕之 金沢大学, 医学系, 教授 (30231476)
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研究分担者 |
辻口 博聖 金沢大学, 医学系, 特任助教 (00723090)
神林 康弘 金沢大学, 医学系, 講師 (20345630)
福冨 友馬 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断・治療薬開発研究室, 室長 (30463110)
八田 耕太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90337915)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / アレルゲン / エピジェネティクス / 腸内細菌 / Tリンパ球 / テイラーメイド予防法 / DNAメチル化 / 16S rRNA遺伝子 |
研究実績の概要 |
近年、増加傾向を示す食物アレルギーは、アレルゲンである食物の感作成分の多様性の大きさから、早期診断にはまったく新しいバイオマーカーの案出が求められる。アレルゲンと遺伝の相互作用として、Tリンパ球と腸内細菌叢の構成におけるエピジェネティックな変化を調べることによって、そのエピジェネティクス機構を解明し、免疫・腸内細菌・遺伝子バイオマーカーを同定するとともに、食物アレルギーの新しい早期診断法とテイラーメイド予防法を示すために、小児と成人の食物アレルギーの分子疫学を実施した。 1-3歳児(食物アレルギー有病児15人、非有病児20人)および20-40歳の成人(食物アレルギー有病者15人、非有病者20人)の計70人をコホートとした。観察開始時のデータとして、アレルギー(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなど)症状、室内塵やダニ、花粉、昆虫、動物および食物などのアレルゲンに対する感作の状態、採血により総IgE値(RIST)および特異的IgE値(RAST)、サイトカインを調べた。また採血により得られたリンパ球を、表面マーカーによって分離されたCD4+T cells、CD8+T-cells、CD56+NK cells、CD19+Bcell、CD14+monocytes、Regulatory T cell (Treg)、effector T cell (Teff) subsets (CD4+CD25neg Teff , CD4+CD25hiCD127lo/- Treg)のDNAメチル化を調べた。また対象者から採取する糞便より、全細菌DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子クローンライブラリー法を用いて腸内細菌叢の菌種解析を行った。その結果、enterobacteriaceae, enterococcaceae, staphylococcaceaeなどの主要菌種とリンパ球のDNAメチル化の関係には、アレルギー有症者において認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子疫学として、1-3歳児(食物アレルギー有病児15人、非有病児20人)および20-40歳の成人(食物アレルギー有病者15人、非有病者20人)の計70人をコホートとすることができたことは、次年度以降のコホートの増大を考えれば、本研究の目的である食物アレルギーの新しい早期診断法とテイラーメイド予防法を示すことが可能となる。また観察開始時のデータとして、リンパ球のCD4+T cells、CD8+T-cellsなどのサブタイプの数量化とDNAメチル化を調べることができ、さらには糞便からの全細菌DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子クローンライブラリーを作成できたことも「おおむね順調に進んでいる」とした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の分子疫学研究では、1-6歳児(食物アレルギー有病児50人、非有病児50人)および20-40歳の成人(食物アレルギー有病者50人、非有病者50人)にまでコホートを増大させる。この計200人に対して採血により得られるリンパ球を、表面マーカーによって分離されたCD4+T cells、CD8+T-cells、CD56+NK cells、CD19+Bcell、CD14+monocytes、Regulatory T cell (Treg)、effector T cell (Teff) subsets (CD4+CD25neg Teff , CD4+CD25hiCD127lo/- Treg)のトランスクリプトーム解析(mRNASeq, Small RNASeq)、エピゲノム解析(ChIPSeq, DNAメチル化)を実施する。 また対象者から採取する糞便より、細菌DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子特異的プライマーを用いてPCRを行う。得られたPCR産物をクローニングし、その塩基配列をMiSeqによって解析し、最終的に作成した糞便より作成したcDNAライブラリーの配列情報をCOGsやKEGG,MG-RASTなどのデータベースにより解析する。また同時にメタゲノム解析を行う。その際、サンプル中に含まれる全細菌DNAを抽出して断片化し,クローニングを行うことによってライブラリーを作製する。それぞれのライブラリーについてMiSeqによって得られた配列データのアセンブリを行い、ゲノムを再構築する。この方法によって、サンプル中に存在する細菌種の同定のみならず,細菌ゲノムおよび遺伝子配列や数量の決定、細菌叢機能の解析を可能とする。
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