研究課題
前年度に作成した企業退職者のレセプトデータと健診データを突合して作成されたデータベースの点検と解析を実施した。本人および家族で2009年度健診受診者は12,835名であり、そのうち59%がメタボリックシンドロームの基準に該当した(健診受診時の年齢が40歳未満、高血圧用剤、高脂血症用剤、糖尿病用剤のいずれかの処方がある場合、または各要素の計測値に欠損がある場合は対象から除外した)。この群で翌年度のメタボリックシンドロームの要素数と医療費(平均値、中央値)の間には明らかな関連性が認められた。またこの群で2010年度から2013年度の追跡期間中に新規に血圧降下剤、高脂血症用剤、糖尿病用剤、インスリン注射が処方された場合をエンドポイントとする比例ハザードモデル解析では、開始時(2009年度)のメタボリック要素数と、その後のイベントとの間には有意な関連性が認められた。死因とレセプトの傷病名との間の関連性については、レセプトをさかのぼっても死因と類似する傷病名を突合できない場合が多く見られ、レセプト記載傷病名から死因を推定・予測する方法の精度は高くないと考えられた。国保レセプトと企業退職者の突合は、レセプトの匿名化作業が実施可能となり、両データから成るデータベースの構築が進行しつつある。現時点では、レセプトデータのみの解析作業を行っているが、同世代の2014年国民医療費との比較では、企業退職者で本研究参加に同意が得られた約850名の国保医療費はかなり低いことが明らかとなった。
3: やや遅れている
自治体での国保レセプトを用いた企業退職者追跡研究では、毎年イベントを実施して参加者をリクルートするため、その作業には多大な時間とエネルギーを要する。また国保レセプトから対象者を抽出するためには愛知国保連合会から自治体にレセプトデータの提供をうけ、個人情報保護に配慮して第三者による匿名化手続きを依頼しなければならないため、当初の見込みより進展が遅れている。
引き続きデータの蓄積と突合によるデータベースの追加構築を行うが、現状での国保レセプトデータの追加入手には手続き上の困難が予測されるため、他の健康保険組合から入手可能なレセプトデータも追加する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Clin Exp Nephrol
ページ: 1-8
10.1007/s10157-016-1315-3