研究課題
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)は、ストレスによって腹痛と便通異常が増悪する代表的な内科疾患である。本研究の目的は、ストレス関連疾患としてのIBSの病態生理を脳腸ペプチドcorticotropin-releasing hormone (CRH)の動態から明らかにすることである。まず、IBS患者における内臓刺激に対するCRH動態の異常を健常者を対照にして分析しつつある。大腸刺激下でのPETによる局所脳血流による中枢神経応答がCRHの存在下でどのように変化するかを検証しつつある。また、健常者の大腸電気刺激時に内臓知覚大脳誘発電位と血中ACTH、cortisolを分析し、同時に左右の背外側前頭前野に経頭蓋磁気刺激を加えてその影響を見ている。CRH受容体CRH-R2の刺激はストレス応答を減弱させることが知られている。IBS患者と健常者のCRH-R2のゲノム分析を行っている。動物はラットの母子分離を1日180分施行し、trinitrobenzene sulfonic acid (TNBS)で腸炎を惹起した後に回復させるモデルにおけるCRH受容体CRH-R1拮抗薬の内臓知覚への効果を分析している。本年度の段階での結果は、IBS患者では扁桃体局所脳血流量がCRH投与で増加する。IBS患者ではこれに内臓刺激が追加されても扁桃体活動が飽和しており、これが血漿noradrenalineの動態と並行する。右背外側前頭前野への経頭蓋磁気刺激は内臓知覚を減弱させるが、血中ACTHは上昇する。IBS患者のCRH-R2遺伝子多型の分布は健常者と異なっていた。母子分離とTNBS腸炎の二重負荷モデルは内臓知覚過敏を増悪させるが、その応答はCRH-R1拮抗薬の投与で改善する。以上の結果を順次論文化して公刊して行く予定であり、今後の研究の展開が多いに期待される。
2: おおむね順調に進展している
申請書に於いて、脳画像を用いた脳腸相関へのCRHの関与の分析、遺伝子多型分析、磁気刺激、動物実験について計画を立案している。研究実績の概要に記載した通り、申請書に記載した速度で分析が進んでいる。
申請書に於いて、脳画像を用いた脳腸相関へのCRHの関与の分析、遺伝子多型分析、磁気刺激、動物実験について計画を立案している。研究実績の概要に記載した通り、申請書に記載した速度で分析が進んでいる。当初の計画通り進展させることにより研究を進める方策で良いと判断する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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