研究課題/領域番号 |
15H04800
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋下 雅弘 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00261975)
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研究分担者 |
小川 純人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20323579)
小島 太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40401111)
石井 伸弥 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80710996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フレイル / 認知症 / ホルモン / サルコペニア |
研究実績の概要 |
加齢に伴う臓器老化の階層構造について老化マウスや疾患マウスを用いて検討した。特に筋骨格系と脳神経系の階層関係に注目し、自然老化の若齢(2~3ヶ月)、中齢(12ヶ月)、老齢(24ヶ月)のマウスを用いて行動観察を行った。運動能力や筋力についてはロータロッド試験、グリップストレングステストを用いて評価、また、学習能力についてはモリス水迷路試験で評価を行った。その結果、運動能力や筋力は若齢に比べ、中齢と老齢マウスにおいて低下しているのに対して、学習能力は老齢マウスのみ低下していることが分かった。これらの結果から身体的フレイルと精神的フレイルは関連していること、さらに身体的フレイルから精神的なフレイルへと段階的に進行することが明らかになった。 また、臓器老化の階層構造に関して、血管老化が脳神経系の老化に影響を及ぼす上流関係であるかを検討した。具体的には老化促進マウスであるSAMP8マウスに大動脈瘤の血管病態モデルを組み合わせると対照マウスであるSAMR1マウスに比べて、認知機能が著明に低下した。この階層関係を説明する機序機序として、大動脈瘤が炎症を主体とする病態であることから、慢性炎症が機序になりうる可能性が高い。 さらに、性ホルモンが臓器老化や老化の連鎖を阻止する中核因子であるかについても検討した。精巣摘出処置を行った野生型マウスに大動脈瘤の血管病態モデルを組み合わせるとテストストロン低下に伴い大動脈瘤の形成と進行が著明に惹起されることが明らかになり、性ホルモンの血管老化抑制作用が示された。血管病変にマクロファージの浸潤が認められることやマクロファージのIL-6発現が上昇していることから性ホルモンの低下が炎症を惹起することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
整えた研究実施体制のもと、自然老化や老化促進マウスの確保および調達が円滑であったことやマウスの疾患誘導が安定した手技で行われたことが臓器別の専門家による適切な評価や解析につながった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臓器老化の連関および階層構造の詳細について、中核因子として想定される慢性炎症や性ホルモン、抗老化遺伝子Sirt1を中心に分子機序の解明を追究する。
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