研究実績の概要 |
我々はカテプシンK (Cat-K) がNotchシグナル活性化を介して、障害後の骨格筋再生を促進させるのではないかとの仮説を立てて実験を進めた。野生型マウス(9週齢, 雄, C57BL/6J)の片側下肢骨格筋に心臓毒(Cardiotoxin、CTX, 10μm/0.2ml)を投与による骨格筋障害モデルを作成し、経時的に骨格筋を採集し、Cat-Kの発現ならびに組織学的に検討した。さらに、Cat-K選択的阻害剤を使用し、CTXによる障害後の組織リモデリングを検討した。研究結果は予測していた結果と異なるものであった。すなわち、Cat-KはCTXによる骨格筋障害後に発現が著しく増強するが、Cat-Kの特異的阻害剤の使用により、CTX による骨格筋障害(アポトーシス)が抑制され、さらに炎症が抑制され、筋肉再生が増強(改善)する結果であった。これらの結果は必ずしもCat-KがNotch活性化を誘導し、骨格筋再生を促す、という当初の仮説を否定するわけではないが、その前のCTXによる骨格筋障害自体をCat-Kがレギュレートしているという、大変興味深い新事実が明らかになった。すなわちCat-Kを阻害することによりCTXによる筋障害が抑制されるということである(Cat-KがCTXによるアポトーシスを増強している)。使用した阻害剤はCat-K特異的とはいえ、さらにこの結果を深く検証するため、Cat-K遺伝子欠損マウスを使用した実験が必要である。
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