研究実績の概要 |
加齢による筋肉再生不良に関するNotch1シグナルの役割は既に報告があるが、サルコペニアへのNotchシグナルの関与に関しては明らかでない。最近Cat-KがNotch1受容体の細胞内ドメインを切断しNotch1活性化に重要な役割を果たしていることを明らかにし、その下流のHes1-Hey1/2発現とVEGF/ R1-PI3K /Aktシグナル経路の活性化を介して血管新生に関与することを報告した。そこで、心臓毒素による骨格筋障害におけるカテプシンK遺伝子欠損(CatKKO)の骨格筋細胞の保護作用(平成28年成果)の機序を一段と明らかにするために、障害された三日目の骨格筋組織を採集し、定量PCRとWestern Blotting法に解析をおこなった。その結果、CatKKOマウス骨格筋組織におけるcleaved‐caspase-8, cleaved-Nothc1, Akt, Hes-1, Hey1,ならびにHey-2蛋白発現ならびにBAX/Bcl-1比の低下、腫瘍壊死因子(TNF-α)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)やToll様受容体-2/-4(TLR-2/-4)の遺伝子発現低下、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-2/-9(MMP-2/-9)の遺伝子発現と活性低下、炎症性白血球とマクロファージの浸潤の著明な低下が認められた。障害された14日目の組織学解析においてCatKKOによる障害された骨格筋間質線維化の有意な低下とラミニン構造の有意な保持が明らかになった。さらに、トレッドミル運動能力テストで垂直方向への仕事量を測定し、小動物握力測定装置にて四肢握力測定を行った。結果、障害後3と7日目において仕事量と四肢握力改善がCatKKOマウスで認められた。この結果から、骨格筋のリモデリングと再生においてCatKがNotch1活性化を介して大きく関与している可能性が考えられた。ただ、当初はCatKがNotch1の活性化を介して筋肉再生を促進するとした仮説は覆された。すなわち当初考えていた逆の効果、すなわちCatKの(過度な)存在はむしろ筋肉の再生を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、実験計画書の通りに研究を進め、2年目の計画通り成果を収めた。 1)野生型マウス(9週齢,雄,C57BL/6J)とCatKKOマウス(9週齢,雄,C57BL/6Jバックグラウンド)の片側下肢骨格筋に心臓毒(Cardiotoxin(CTX), 1.3mmol/kg・day)を投与する方法で、骨格筋障害(アポトーシス)モデルを作成し、障害された3日目の骨格筋組織を採集し、定量PCRとWestern Blotting法による解析をおこなった。その結果、CatKKOマウス骨格筋組織におけるcleaved-caspase-8, cleaved-Nothc1, Akt, Hes-1, Hey1,ならびにHey-2蛋白発現ならびにBAX/Bcl-1比の低下、腫瘍壊死因子(TNF-α)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)やToll様受容体-2/-4(TLR-2/-4)の遺伝子発現低下、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-2/-9(MMP-2/-9)の遺伝子発現と活性低下、炎症性白血球とマクロファージの浸潤の著明な低下が認められた。 2)障害された14日目の組織学解析においてCatKKOによる障害された骨格筋間質線維化の有意な低下とラミニン構造の有意な保持が明らかになった。 3)トレッドミル運動能力テストで垂直方向への仕事量を測定し、小動物握力測定装置にて四肢握力測定を行った。結果、障害後3と7日目において仕事量と四肢握力改善がCatKKOマウスで認められた。 4)カテプシンK阻害剤投与により障害された骨格筋の機能改善が観察されたので、詳細な機序解明を次年度継続して行う。
*特許申請中で、現段階では、一部の結果を公表することを控える。取得後に研究成果を即時に開示する。
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