研究実績の概要 |
当該研究において、CatKがNotch1の活性化を介して筋肉再生を促進するとした当初の仮説が覆され、障害後骨格筋でのCatK発現の上昇がむしろ筋肉再生を阻害する要因であることが明らかとなったことから、現在多くの疾患で臨床的にも問題となっているカヘキシアによる骨格筋萎縮と、CatKとの関係をマウスのカヘキシアモデル(C57BL/6Jにマウス肺癌細胞株(Lewis lung carcinoma, LLC,1×10 6個)を背部皮下に移植し、移植28日後にサンプリングする)を作成し、下肢筋肉の評価、ならびに運動機能評価を行った。移植28日後に摘出した腫瘍組織重量は両群で有意差を認めず、腫瘍組織重量を除いた体重の変化率はコントロール群(C57BL/6J)に比較し、LLCを移植したカヘキシアモデル群で有意に低下し、筋重量も有意に減少した。筋線維サイズはコントロール群に比較し有意に減少し、さらにカヘキシアモデル群で握力の有意な低下を認めた。また、サンプリングした筋細胞(腓腹筋)の生化学的検査を実施したところ、ユビキチンプロテアソーム系(Atrogin-1,MuRF,FOXO1,FOXO3)の遺伝子発現がカヘキシアモデル群で有意に高くなっていた。同様に、LLCをカテプシンK遺伝子欠損マウスに移植し、下肢筋肉の評価ならびに運動機能評価を行ったところ、CatK-KO+カヘキシアモデル群ではカヘキシアモデル群で認めた体重減少および筋重量の低下を認めず、筋線維サイズの有意な増加を認めた。運動機能評価についてもCatK-KO+カヘキシアモデル群では握力低下を認めなかった。CatK-KO+カヘキシアモデル群においてユビキチンプロテアソーム系(Atrogin-1,MuRF,FOXO1,FOXO3)の遺伝子発現は低下し、p-Aktタンパク質発現が増加していた。以上より、カヘキシアモデルにおいてCatKのサルコペニア抑制効果が示唆された。
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