研究課題
申請者らは、4週間拘束ストレス負荷マウスにおける血中DPP4活性化とカテコールアミン亢進とともに、血中と脳組織GLP-1レベルならびにその受容体(GLP-1R)発現が低下し、骨髄においてβ3-アドレナリン受容体発現亢進とCXCL12発現低下をきたし、骨髄造血幹細胞の増殖と末梢血への単核球と白血球の放出を促進することを明らかにした。申請者は、ストレスによる過剰な炎症応答が、生体内DPP4による GLP-1ホルモンの分解亢進及びGLP-1/GLP-1受容体(GLP-1R)シグナル減弱化を介して血管老化を引き起こし、さらにそれに伴う動脈硬化性血管病を発症・増悪させるのではないかと考えた。そこで、6週齢雄ApoE欠損マウス(ApeE-/-)に高脂肪食負荷(対照群)、高脂肪食/チューブ型拘束ストレス負荷(ストレス群)と高脂肪食とチューブ型拘束ストレス+GLP-1受容体作動薬3群に分けて、3ヶ月負荷によるストレス性動脈硬化誘発モデルを作成し、マウス大動脈、血液と骨髄を採集して生化学ならびに組織学検討を行った。その結果、高脂肪食負荷対照群マウスと比較し、骨髄造血幹細胞の活性化と血液中マクロファージーと白血球の数の増加が確認された。長期間ストレス負荷による3箇所動脈硬化病変部位における炎症性細胞浸潤とMMP2/MMP9発現・活性亢進に伴う血管老化と動脈硬化形成促進が認められた。その一方、動脈硬化線維性被膜とコラーゲン沈着の減弱が確認された。これらの変化は、DPP4阻害剤の投与に著しい改善が認めた。さらに、DPP4KOマウス、DPP4-IとGLP-1受容体作動薬を用いて、慢性ストレスが血管老化と虚血性血管新生への悪影響を突き止めた。これらのことより、DPP4阻害剤とGLP-1R作動薬は、これらのストレス性血管病治療に有用であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者は、実験計画書の平成28年度の計画通りに研究を進め、以下の成果を収めた。1)ストレスが骨髄細胞の造血幹細胞への影響に関して詳細な検討を行い、その成果を論文に纏めた(Zhu et al. Arteriosclerosis, Thromobosis, and Vascular Biology. April 5, 2017 in revision)。 2)6週齢雄ApoE欠損マウス(ApeE-/-)に高脂肪食負荷(対照群)、高脂肪食/チューブ型拘束ストレス負荷(ストレス群)と高脂肪食とチューブ型拘束ストレス+GLP-1受容体作動薬3群に分けて、3ヶ月負荷によるストレス性動脈硬化誘発モデルを作成し、マウス大動脈、血液と骨髄を採集して生化学ならびに組織学検討をおこなった。その結果、GLP-1受容体作動薬を長期間投与することで、慢性ストレスにより悪化した動脈硬化病変の面積、脂質沈着、炎症細胞浸潤、プラーク安定性と血管老化の改善効果が認め、論文に纏めた(Yang et al Atherosclerosis March 30, 2017 in revision)。 3)同様に、DPP4阻害剤もストレスによる血管老化(平成29年度計画分)と動脈硬化形成を著名に抑制した。さらに、その機序も明らかにし、論文に纏めた(Lei et al. International Journal of Cardiology, March 23, 2017 in revision)。 4)DPP4遺伝子欠損による血管老化抑制効果を確認し、その機序解明を進めている。5)DPP4-IとGLP-1受容体作動薬を用いて、慢性ストレスが血管老化と虚血性血管新生への悪影響を突き止めた。 6)非慢性ストレス群マウスの骨髄移植による慢性ストレス性血管老化と虚血性血管新生悪化の改善が確認された。*特許申請を検討中で、現段階では、一部の結果公表を控える。申請終了後、研究成果を即時に開示する。
慢性ストレスによるGLP-1/GLP-1Rシグナルが減弱され、血管内皮老化が生じると予想される。その際、血管細胞アポトーシスや骨髄内皮前駆細胞機能不全が生じ、血管老化反応の加速とそれに伴う血管新生低下·血管病悪化を一段と明らかにすることを本年度の研究目的とする。前期の2年間で、ほぼ全体の研究計画内容を完成し、今年の9月まで研究計画の完成を目指しています。1)ストレス解消あるいは緩和処置による効果検討:4週間ストレス負荷後、ストレス完全停止あるいは緩和(回数と時間を半分に軽減)処置3週間後に次の検討を行う。ア)心血管系、交感神経系と代謝系変化の評価; イ)骨髄-血中と組織内好中球/単球/マクロファージ系活性化変化の評価; ウ)DPP-4活性亢進ならびにGLP-1活性とそのシグナル低下改善の評価; エ)血管内皮老化と血管機能不全改善の評価; オ) 血管新生低下改善の評価。2)ストレス性血管老化及び再生不全病態に対する骨髄由来マクロファージの寄与する度合いの評価:拘束ストレス4週間負荷後、マウスにリポソーム投与によるマクロファージディプリーションや骨髄移植による骨髄造血幹細胞の再構築を行ない、β-gal染色や内皮機能測定法によって血管老化の改善を評価する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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