研究課題
炎症性腸疾患(IBD)の遺伝背景は、欧米でのアレイによるゲノムワイド相関解析(GWAS)によって多くの感受性遺伝子が同定され、さらに高密度多型解析で欧米人では感受性多型は一気に200か所まで解明された。2014年に高精度の東北人ゲノムリファレンスパネルが作成されたことで、日本人での高密度多型解析が可能となった。そこで、本研究で日本人IBDの遺伝因子解析を進めることとした。患者約1314人、健常人コントロール2198人について、日本人用のSNPジェノタイピングカスタムアレイであるJaponica Arrayを使用し、約67万多型のGenotypingを行った。日本人リファレンスパネルデータ(1KJPN)を使用して約986万多型をimputeし、それらを用いたゲノムワイド相関解析を開始した。この結果、クローン病では13領域がP<1e-6の候補領域として同定された。このうち最も強い相関が認められた領域はTNFSF15遺伝子を含む領域で、最も有意な相関を認めたのはrs78898421 (p=2.59E-26)であった。13領域のうち8領域は既知の領域あるいは、その近傍であり、5領域が新規の候補領域である。5つの新規領域について、別の検体としてクローン病286例、健常人254例のDNAを用いてReplication Studyを行ったところ、RAP1A遺伝子の下流に存在するrs488200が有意な相関を示した(p=1.98E-8,OR 1.39)。クローン病患者の外科手術標本における腸管粘膜rs488200の遺伝子型毎のRAP1Aの発現を比較したところ、クローン病リスクアリルとRAP1Aの発現低下に相関があった(p=0. 000927)。RAP1Aはリンパ球の腸管へのホーミングにかかわる蛋白であり、Rap1のノックアウトマウスで腸炎が確認されており、今回の結果と矛盾しない。以上から、RAP1Aが日本人クローン病の新規疾患感受性遺伝子として同定された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
PLoS One
巻: 13 ページ: -
10.1371/journal.pone.0194036
J Gastroenterol Hepatol
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/jgh.14149
J Gastroenterol
巻: 52 ページ: 1230~1239
10.1007/s00535-017-1322-5