研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染においては高率に肝細胞癌(肝癌)を合併するが、その発癌の分子医学的機序は充分には解明されていない。我々は以前に、マウスをモデルとしてHBVのHBxタンパクに肝発癌作用があることを示し、HBV関連肝発癌におけるウイルス因子の重要性を示してきた。しかし、臨床的観察からはB型肝炎肝発癌においても炎症因子は重要であり、かつ最近では過栄養(肥満)因子による発癌促進も示唆されてきている。 最終年度は、以下の成果を挙げることができた。(1)HBV持続感染において、cccDNA mini-chromosomeが長期に産生されるが、この過程においてHBV-RNAが生物学的活性をもち病原性に関与することを明らかにした。すなわち、DExH-box helicase 9 (DHX9)がHBVからの環状RNA生成とHBVタンパクレベルを制御しており、これがHBV持続感染の一つのkey moleculeである(Sekiba K, Koike K, et al., Oncotarget 2018 in press.)。(2)HBxタンパクとdamage-binding protein 1 (DDB1)の相互作用を通じ、structural maintenance of chromosome (Smc) 5/6の分解促進を介してcccDNAからの転写を促進することを明らかにした。さらに、HBV-cccDNAの排除を達成するために、排除作用をもつ物質のスクリーニングを行なった結果、nitazoxanideがHBx-DBB1の相互作用を阻害することを発見した。nitazoxanideは、他剤との併用等によってHBV-cccDNAの排除を起こす可能性がある(Sekiba K, Koike K, et al., submitted)。
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