IL-10産生制御性B細胞の存在が潰瘍性大腸炎をはじめ多くの疾患で明らかになっているが、これまでB細胞と考えられていたIL-10産生細胞が形質芽細胞である可能性も報告されている。よって、本研究はIL-10産生形質芽細胞(Preg)の発生機序を解明することにより、免疫抑制のための新たな細胞療法開発の基礎基盤を樹立する事を目的とする。 Pregの発生機序の解明のため、IL-10産生時に緑色蛍光を発するレポーターマウスと形質細胞分化に必要なBlimp-1を欠失させたマウス及び免疫グロブリン産生に必要なAIDが欠失したマウスと交配した。結果として、IL-10を恒常的に産生し未成熟B細胞抗原であるCD93を発現する細胞はB細胞でなく形質芽細胞であり脾臓で分化する事を見出した。また、Pregは脾臓においても選択的にIgAを産生する事も認めたが、AID欠失に伴うクラススイッチの消失ではPregが減少も欠失は認めなかった。これらの事より、B細胞によるIL-10の産生には抗原曝露による形質芽細胞への分化が必要で、その後のIgAへのクラススイッチはIL-10産生の促進因子として作用している可能性が示唆された。 Preg欠失による腸炎への影響を検討するため、慢性腸炎モデルあるT細胞受容体α欠失マウスにIL-10レポータマウスを交配した。脾臓のIL-10産生Pregは腸炎の重症度に伴い腸管膜リンパ節で増加を認めた。この腸炎マウスにB細胞特異的Blimp1欠失マウスを交配するとPregは消失し、腸炎の優位な悪化を認めた。よって、Pregは腸炎に対して抑制的に働いていると考えられた。一方、AID欠失下ではPregは減少も消失は認めず、腸炎の軽度の悪化しか認めなかった。 これらの結果より、抗原特異的に分化するIgA産生形質芽細胞がIL-10を産生することにより腸炎の改善に寄与していると考えられた(現在論文の投稿準備中)。特異的抗原の同定は炎症性腸疾患に対する新たな治療法開発に光明をもたらすことが期待される。
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