研究課題
ヒトゲノムプロジェクトは、人類の全ゲノム配列を解読し、その結果、多くのSNPも同定された。ヒトの病気や薬に対する反応性診関わる遺伝的背景も、2007年から実施されたHapMapプロジェクトで明らかにされ、ヒトでは実に310万個のものSNPが同定された。この研究はその後のGenomeWide AssociationSutdy(ゲノムワイド関連解析)への展開に繋がった。さらに、短時間に大量のゲノム情報を読み取ることが出来る次世代シークエンサの開発により、この分野の研究量は飛躍的に増加した。われわれは、1996年(最初の遺伝性QT延長症候群の関連遺伝子が報告された翌年)から、倫理委員会の承認を受け、患者さんより同意を得て、各種循環器疾患の臨床像とゲノムの集積を続けている。たとえば、遺伝性QT延長症候群に関しては、現時点で822名(家系)の発端者について検討しており、そのうち465名で遺伝子異常を同定している。このコホートの大きさは、海外の大きな研究チームに比べても遜色がない。平成28年度は、このようなデータベースを元に、同様の研究を進めている海外の研究室とも共同研究を行っている。フランス第6大学、 Pascale Guicheney教授とのグループとは、重症遺伝性不整脈症例で同定された変異についての既報解析をすすめている。また、オランダ、アムステルダム アカデミックメディカルセンター のBezzina 教授とは、ブルガダ症候群の新規遺伝子異常の同定を共同で行っている。さらにおなじ大学の臨床部門のWilde教授、Lieve先生とはCPVT症例のデータベース作りが進行中である。長年共同研究している西安交通大学、薬理学教室のWu教授らとは、実際に中国の若手研究者を当教室に派遣いただき、一緒に電気生理学実験などを実施した。共同研究の関連で、4人の海外からの先生の学内講演を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
1996年(最初の遺伝性QT延長症候群の関連遺伝子が報告された翌年)から集積している、遺伝性不整脈を中心とした遺伝性循環器疾患の臨床データベースは、現在、4900例を越え、世界の動揺のコホートの中でも有数のものとなっている。このため、正解中から共同研究の要請があり、平成28年度は、上述のようにさらに多くの海外の研究者との共同研究が進展した。フランス、イタリアの臨床グループと共同で、遺伝性不整脈の中でも最も頻度が高い遺伝性QT延長症候群を188症例集積し、その遺伝的背景を詳しく検討した結果、約30%にすでに報告されている先天性QT延長症候群の原因遺伝子に、変異を同定した。さらに、簡単なスコアリング方法で、患者さんの変異陽性率を予測することが出来ることをEuropean Heart Journal誌に報告した。また、日本人QT延長症候群のデータベースを基に、近年、updateされたシュワルツスコアのvalidationを行った(JACC Clin Electrophysiolに掲載)。さらに、遺伝性不整脈の中でも、非常に短いCoupling時間で繋がる心室性期外収縮から、いきなり心室細動を来すshort-coupled variant of torsade de pointes (ScTdP)の遺伝的背景は長らく不明であったが、われわれの7例の検討から、うち4例に、心筋sarcoplasmic reticulumのCaチャネルであるRyanodine受容体チャネル遺伝子(RYR2)の変異を同定した順天堂大学薬離学教室との共同研究で、これらのRYR2 変異のうち、典型的なScTdPで発見されたものでは、著名なloss-of-functionを来すことを明らかとした。このRyanodine受容体チャネルの変異の発見は、世界に先駆けてのものであった(Heart Rhythm誌に発表)
遺伝性不整脈は、近年、ヒトゲノムプロジェクトをはじめとする分子遺伝学の急速な進歩により明らかとされてきた新しい疾患概念である。すなわち、心臓のイオンチャネルあるいはその関連蛋白をコードする遺伝子の多種多様な変異や一塩基置換(single nucleotide polymorphism: SNP)により招来される疾患群である。幸いなことに、これらの蛋白群は、興奮精細胞の活動電位形成に関与しているため、パッチクランプ法で、その機能を解析することができる。本研究課題では、それに加えて、患者さんから得られる血液より分化したiPS細胞より心筋細胞を作成し、おなじくパッチクランプ法を用いて機能解析を行うことが出来る。現在、ブルガダ症候群、先天性QT延長症候群、カテコラミン誘発多型性心室頻拍、ラミン心筋症などの多様な疾患のiPS由来心筋細胞が分化誘導できており、電気生理学的にNa電流、Ca電流が、安定して記録できるようになってきている。今後、展開すべき研究の推進方向である。さらに、これらのWet実験で得られた知見をコンピュータシュミレーションに組み込む形で、活動電位や不整脈の再構築を試みている。これらの多方面からのアプローチにより。遺伝性不整脈の発症機序に迫る研究を展開する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (55件) (うち国際共著 14件、 査読あり 52件、 オープンアクセス 31件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 28件) 図書 (7件)
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