研究課題
本研究では、ジフテリア毒素の細胞内侵入メカニズムより着想を得た独創的・革新的送達技術であるHB-EGF抗体結合ベクターを用いて、薬剤・核酸(siRNA・microRNA)・ペプチドなどを疾患部位特異的(不安定プラーク)に送達宇する基盤技術を開発し、世界をリードする日本発の革新的医薬品の創出に貢献する。ヒト冠動脈サンプルを用いた検討の結果、小胞体発信アポトーシスシグナルであるC/EBP homologous protein (CHOP)の発現増大を認めた。今年度、CHOPを標的としたsiRNAを結合したHB-EGF結合ベンターの作製を試み、成功した。不安定化プラーク部位におけるHB-EGF抗体結合ベクターの標的細胞を明らかにするため、動脈硬化部位に集積したHB-EGF抗体結合ベクターと、抗CD68抗体(マクロファージマーカー)および抗α-SME抗体(平滑筋細胞マーカー)との蛍光二重免疫染色を行った。しかしながら、動脈硬化部位に蓄積した過酸化脂質に由来する強い自家蛍光のため、上記抗体との共染色性の有無を判断することができなかった。そのため、大阪大学に設置されている近赤外共焦点レーザー顕微鏡を用い、自家蛍光の低い近赤外波長領域を用いた蛍光二重免疫染色を検討した。その結果、自家蛍光は軽減したが近赤外領域でのシグナルが不十分で、やはり共染色性を判定することができなかった。免疫染色による標的細胞の同定は困難と判断し、セルソーターによるHB-EGF結合ベクターの標的細胞の分離を試みたが、担当者の移動も重なり十分な解析が実施できていない。今後は、より簡便な磁気ビーズによる細胞分離法(MACS法)も含め、HB-EGF抗体結合ベクターの標的細胞の同定を進める予定である。
3: やや遅れている
今年度は、不安定化プラーク部位におけるHB-EGF抗体結合ベクターの標的細胞を明らかにするため、動脈硬化部位に集積したHB-EGF抗体結合ベクターと、抗CD68抗体(マクロファージマーカー)および抗α-SME抗体(平滑筋細胞マーカー)との蛍光二重免疫染色を行った。しかしながら、動脈硬化部位に蓄積した過酸化脂質に由来する強い自家蛍光のため、上記抗体との共染色性の有無を判断することができなかった。そのため、大阪大学に設置されている近赤外共焦点レーザー顕微鏡を用い、自家蛍光の低い近赤外波長領域を用いた蛍光二重免疫染色を検討した。その結果、自家蛍光は軽減したが近赤外領域でのシグナルが不十分で、やはり共染色性を判定することができなかった。免疫染色による標的細胞の同定は困難と判断し、セルソーターによるHB-EGF結合ベクターの標的細胞の分離を試みたが、担当者の移動も重なり十分な解析が実施できていない。今後は、より簡便な磁気ビーズによる細胞分離法(MACS法)も含め、HB-EGF抗体結合ベクターの標的細胞の同定を進める予定である。
動脈硬化巣へのHB-EGF抗体結合ベクターの核酸導入効率を評価するために、(HBhz/hz/ApoE-/-)マウスにレポーター遺伝子として導入したhrGFPを標的としたsiRNAをHB-EGF抗体結合ベクターと結合し、高脂肪食負荷を行った(HBhz/hz/ApoE-/-)マウスに静脈内投与、Real-time PCRを行う事で動脈硬化巣への核酸導入効率を確認する。動脈硬化巣のサンプル回収にはレーザーマイクロダイセクション法を用いる。次にHB-EGF抗体結合ベクターの非特異的な核酸導入が起こるかどうかを評価するために、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDH標的としたsiRNAをHB-EGF抗体結合ベクターと結合し、高脂肪食負荷を行ったHB-EGF KIマウスに静脈内投与、Real-time PCRを行う事で動脈硬化巣及び他臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓)への核酸導入を確認する。平成28年度に引き続き平成29年度もHB-EGF抗体ベクターの標的細胞の同定を行う。また、既に動脈硬化原因遺伝子として報告されている遺伝子(マクロファージの場合、MafB、AIM (Apoptosis inhibitor of macrophage))に対するsiRNAを結合した HB-EGF 抗体結合ベクターを作成し、(HBhz/hz/ApoE-/-)マウスへ投与し、ノックダウン効率を定量的PCR法およびウエスタンブロットで検討する。50%以上のノックダウン効率が確認された場合後、動脈硬化部位の脂肪染色により動脈硬化巣の範囲を定量的に評価し、治療効果を判定する。
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