研究実績の概要 |
メタボリック症候群は、見た目のかっこ悪さを警告しているだけではなく、「内臓脂肪」がさまざまな生活習慣病の引き金となり、死を早めてしまうことが問題となっている。それだけではなく、メタボは感染に対する抵抗力が低下する、癌や自己免疫疾患、認知症の発症リスクが高まるなど様々な異常をきたす。メタボに起因するこれらの体調の変化は、高齢者の特徴でもある。したがって、メタボが老化の徴候を加速させる「メタボ・エージング」の可能性が指摘されてきた。飽和脂肪酸が豊富な高カロリー食が内臓脂肪組織の老化の徴候を加速させている仕組みを研究していたところ、肥満マウスの内臓脂肪組織中に若いマウスが本来もつはずのない、高齢マウスに出現する老化関連Tリンパ球と極めて良く似た特徴を持つ細胞集団が激増していることを発見した。この細胞は大量のオステオポンチンの分泌を介して内臓脂肪の炎症を慢性化させる「悪の指揮者」としての役割を果たしていることを明らかにした(J Clin Invest, 2016: 126: 4626-4639, PLoS One. 2017)。 この発見は、内臓脂肪型肥満が引き起こす症状や病気をくいとめるための治療法開発の道が見えてきたことを意味する。その治療法では、「老化したT細胞を作らせない、あるいは、体内から排除すること」がポイントになる。ヒトでも同様の仕組みがあれば、メタボだけでなく高齢者の免疫異常を制御して、健康長寿の実現に貢献できることが期待される。
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