研究課題
気管支喘息は人口の約5%が罹患する重要なアレルギー疾患である。その多くは吸入ステロイドを中心とした既存治療でコントロール可能であるが、5-8%が治療抵抗性の重症喘息であり、その病態の解明および治療戦略の確立が急務である。気管支喘息の病態には気道上皮細胞をはじめとする組織構築細胞とリンパ球や樹状細胞など免疫細胞との相互作用が関与することが示唆され、新たな治療標的として注目を集めているが、その分子メカニズムの詳細は依然不明である。本研究者はこれまでに、喘息の主要アレルゲンであるHouse dust mite(HDM)の刺激を受けた気道上皮細胞が様々なサイトカインを産生し、免疫細胞の分化を制御すること、一方、T細胞はIL-22等のサイトカインにより気道上皮細胞の機能を制御することを明らかにした。本申請研究では、気道上皮細胞と免疫細胞の相互作用に着目し、気道上皮細胞と免疫細胞から構築されるバリア機能(気道上皮-免疫バリア)に対するアレルギー性炎症の影響を明らかにし、その制御法を開発することを目指している。平成27年度の研究では気道上皮細胞に発現が確認されたatypical IkBファミリー分子IkBNSの役割を中心に解析し、気道上皮細胞に発現するIkBNSは杯細胞分化及び気道過敏性の亢進に重要な役割をはたすこと、一方血球系細胞に発現するIkBNSは、気道炎症の抑制に関与することを見出した(論文投稿中)。本研究のさらなる推進により、喘息の難治化機構の一端が明らかになるとともに、本機構を標的とした新たな治療戦略が確立されることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
各種キメラマウスの作成により、気管支喘息の病態におけるIkBNSの役割の詳細を明らかにすることができた。一方で、網羅的解析から得られた候補分子の解析は不十分であり、予定以上に研究が進んでいるとはいえない。そのためおおむね順調に進展していると評価した。
今年度は気道上皮細胞の糖鎖修飾に関与する分子の解析を中心に研究をすすめる予定である。既に研究に必要なマウスの導入を終えており、今年度中には結果が得られると思われる。
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