研究課題/領域番号 |
15H04829
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
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研究分担者 |
坂上 拓郎 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00444159)
田澤 立之 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70301041)
牛木 隆志 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80579152)
北村 信隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90224972)
井上 義一 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 臨床研究センター長 (90240895)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺胞蛋白症 / 分子細胞呼吸器学 |
研究実績の概要 |
自己免疫性肺胞蛋白症はGM-CSFに対する自己抗体がGM-CSFを中和することで発症することが知られているが、その自己抗体の性質は解明されていない。我々は、自己抗体の分子生物学的性状の解明を目指している。自己免疫性肺胞蛋白症の末梢血B細胞からGM-CSF自己抗体BCRを発現する細胞をソートし、RNA抽出後完全長cDNAライブラリ-を作製し、SMARTer systemにより、自己抗体軽鎖、重鎖の次世代シークエンス解析を行った。軽鎖は、12人の患者からトータル173,801readsのシークエンスを得て、データクリーニングにより、有効なPCR配列 32,158 readsを得た。さらにバイオインフォマティクスソフトであるIMGTにより、productiveであると示された 16,467 readsのシークエンスを得た。アイソタイプごとに分類した結果、Kappa鎖のシークエンスが 4,082 reads、Lambda鎖のシーケンスが12,385 reads であった。重鎖は、22人の患者からシーケンスローデータとしてトータル’9813678 'readsを得て、データクリーニングを行い、高精度の4753881 paired-readsを得た。これらをデータベースの参照配列と照合し、イムノグロブリン遺伝子の配列とマッチする4406182 paired-readsを抽出後、アイソタイプごとに分類し、IgGは2056530 paired-reads、IgMは2316355 paired-readsを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重鎖のシークエンスについては、ペアリングした双方向リードをマージし、抗体全長配列情報を不足無く取得できたリードをIgGは1043917 reads、IgMは1575052 readsを抽出した。さらにIMGTにより、productiveと判定されたリードデータを抽出しており、軽鎖と共通の11人の患者分のデータからIgGは321353 reads、IgMは622848 readsを抽出した。現在までに明らかとなったことは、同一患者内でも患者間でも特定のgerm line alleleから変異したクローンが大部分を占め、かつ同一のalleleからは、同じCDR配列を持つクローンが患者間で多数観られた。このことは、GM-CSFに結合する部位は、CDR配列であるが、特定のクローンが結合しやすいCDR配列を持つかどうかは、alleleの組み合わせに依存するということを示唆している。また、CDR3配列をread数の多いものから順に並べ、対応するCDR1/2の配列、FR1/2/3の配列を調べると、一意的に配列が決定されることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
10人の患者のIgG型自己抗体軽鎖、重鎖の配列を上位10クローン選び、ベクターに組み入れた後、CHO細胞にcotransfectionし、発現した自己抗体リコンビナント抗体について、ELISA法でGM-CSFとの結合性を調べ、さらに陽性のリコンビナント抗体について表面プラズモン共鳴法により結合定数、解離定数を測定する。また、患者血清を用いた予備的な検討では、GM-CSFを構成する4つのαヘリックスのうち、C端側の115ー127番目までのアミノ酸配列にepitopeが集中していると思われる。しかし、患者の血清自己抗体はポリクロであるため、厳密にはエピトープ決めが困難であった。そこで、今回作製する一部のリコンビナント抗体については、GM-CSFペプチドとの結合をしらべ、エピトープを決定する。以上により、自己抗体の構造活性相関を解明する予定である。
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